この記事のポイント
- 2025年度に公募予定の「新事業進出補助金」は最大9,000万円・補助率1/2と高額だが、採択率は決して甘くない
- 採択を左右する要因の一つが「財務計画(PL・BS・CF)」の説得力
- 3年以内の黒字転換や付加価値額アップを具体的に示すことが鍵
- 製造業・飲食業・ITサービス業それぞれの採択事例から学ぶポイントを詳説
- 金融機関のつなぎ融資や推薦状を活用し、審査員に「資金面も安心」と思わせる方法
2025年12月末まで公募が続く(※予定)「新事業進出補助金」は、最大9,000万円・補助率1/2という大型枠が用意され、設備投資や新規プロジェクトの立ち上げを考える中小企業にとって大きなチャンスです。しかし、その採択率は決して高くありません。特に申請書の財務計画(損益計算書・貸借対照表・資金繰り)が曖昧だと不採択になりやすいという声が多数寄せられています。
実際、専門家によれば「3年以内の黒字転換が見込めない事業計画は、よほどの技術革新がない限り通りにくい」とのこと。この記事では、財務計画のポイントをしっかり押さえて採択率を20%アップさせる方法を詳説します。製造業・飲食業・ITサービス業の3業種を例に、具体的な数字の盛り込み方や金融機関の推薦状活用など、役立つノウハウを一挙公開します。

1. はじめに:2025年 新事業進出補助金とは
2025年に新設・拡充が予定されている「中小企業新事業進出補助金」は、新規事業へ踏み出す中小企業に対して、最大9,000万円・補助率1/2まで支援する大型補助金です。新事業に必要な設備投資や開発費用、マーケティング経費などが補助対象になるため、大きく事業を変革したい企業にとって非常に魅力があります。
一方で、その審査は厳しく、採択率も決して高くありません。採択・不採択を分ける大きなポイントとして、事業計画全体の整合性と財務計画の説得力が挙げられます。特に財務(PL・BS・CF)は苦手意識を持つ経営者が多く、「何年で黒字になるか」「どの程度の資金調達が必要か」「付加価値額はどう増えるのか」などをうまく示せずに不採択になるケースが散見されます。
この記事では、製造業・飲食業・ITサービス業の採択事例をもとに、財務計画をどう作れば採択率を高められるかを解説します。3年以内の黒字転換、付加価値額アップ、自己資本比率の維持など、審査員が求めるポイントを具体的に紹介しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
2. 製造業の採択事例:PL・BS・CFの書き方ポイント
2-1. 事例概要
製造業は設備投資が大きいケースが多く、補助金を活用して新分野・新製品を開発するという申請が盛んに行われています。例えば、「プラスチック製品メーカーが蓄電池部品製造に挑戦」した事例では、補助金を使って特殊設備を導入し、需要拡大が見込まれる分野へのシフトを図りました。
2-2. 損益計算書(PL)のポイント
- 減価償却費の負担を考慮
高額設備を購入すると初年度~2年目に減価償却費が重くのしかかり、営業利益が圧迫されます。この事例企業では、初年度赤字→3年目に黒字転換→5年目までに新事業売上比率11%超という流れを明確に設定。 - 投資回収期間を明示
「設備投資総額◯千万円を×年で回収し、耐用年数◯年を超えて長期で利益を生み出す」など、投資が妥当だと審査員に納得させる数値を示しました。
2-3. 貸借対照表(BS)のポイント
- 自己資本比率の維持
補助金があっても全額はカバーできないため、自己資金や融資が必要になります。自己資本比率が大きく下がりすぎないように融資と自己資金の比率を調整。 - 資金調達余力を強調
「融資実行後も自己資本比率◯%を確保」など、財務の安全性が保たれるシナリオを示しました。
2-4. キャッシュフロー計算書(CF)のポイント
- 補助金は後払い
先に全額を自己負担し、後から補助金が支払われるため、初年度に大きなキャッシュアウトが発生。 - つなぎ資金の確保
2年目以降に補助金が入金される計画をCF表に書き込み、融資や手持ち資金で一時的にしのぐプロセスを明確化。

製造業のポイント: 減価償却費による利益圧迫を前提に「初年度赤字→3年以内黒字転換→5年後には投資回収」の流れを示し、付加価値額向上(営業利益+人件費+減価償却費)を年3%以上目標にすることが鍵です。
3. 飲食業の採択事例:PL・BS・CFの書き方ポイント
3-1. 事例概要
コロナ禍をきっかけに、和食レストランが冷凍食品EC販売に進出して採択された事例があります。既存店舗の売上減を補うため、新メニューを商品化・オンライン販売する新事業を立ち上げました。
3-2. 損益計算書(PL)のポイント
- 売上予測に市場調査や試験販売データ
「客単価◯円の冷凍食品を月◯個販売」で月商◯万円、初年度△百万円の赤字→2年目に黒字転換と具体的にシミュレート。 - 人員・設備の既存活用で固定費圧縮
従来店舗スタッフやキッチン設備を部分転用し、初期投資を抑えたモデルを提示。
3-3. 貸借対照表(BS)のポイント
- 在庫(棚卸資産)の増加
冷凍商品の在庫管理が必要になるため、BS上で棚卸資産が増える。資金繰りも含めて配慮。 - 自己資本比率と流動比率
新事業でも財務の安定性を損なわない計画が評価された。
3-4. キャッシュフロー計算書(CF)のポイント
- 補助対象経費を最大限利用
広告費や設備費など補助対象分を活用し、自己負担を軽減。 - つなぎ融資の明記
「補助金が入るまで◯◯銀行からつなぎ融資を受ける」旨を示し、資金繰りリスクを低減。

飲食業のポイント: 「小さく始めて早期に黒字転換する」リアルな計画が重要。3年以内の単年度黒字化や付加価値額増を明確に描き、「店舗人員をECに一部転用」「設備費は補助金活用」でコストを抑えつつ、安定経営をアピールします。
4. ITサービス業の採択事例:PL・BS・CFの書き方ポイント
4-1. 事例概要
IT企業B社が自社クラウドサービスを開発し、人材紹介事業に参入する計画で採択された例があります。形ある設備より、人件費や開発費が主な投資要素でした。
4-2. 損益計算書(PL)のポイント
- 開発期間2年は赤字→3年目黒字化
サービス提供開始までは売上がほぼゼロ。3年目から月◯人のユーザー獲得で大きく利益転換するシナリオを提示。 - 付加価値額をどう増やすか
人件費に見合うだけの粗利益を稼ぎ、3年後には開発要員の2倍の生産性を確保する計画をアピール。
4-3. 貸借対照表(BS)のポイント
- 自己資金取り崩し→補助金後の回復
無形資産への投資が中心なので、初年度・2年度で自己資本を一時減らすが、3年目以降の利益蓄積で回復し、5年後には自己資本比率◯%に向上。 - 減価償却負担は軽微
ソフトウェアを無形固定資産化しない場合は減価償却費が少なく、代わりに開発人件費が大きなコストとなる。
4-4. キャッシュフロー計算書(CF)のポイント
- 開発中の資金繰り
人件費負担が続くため、初年度・2年度に数千万円キャッシュアウト。補助金入金が遅れるので、銀行融資や手元資金でブリッジ。 - サブスク収入で安定CF
3年目以降は月々の手数料収入で安定した営業キャッシュフローを生み、5年後に累積黒字転換の計画を提示。

ITサービス業のポイント: 開発投資→収益化までのロードマップを明確にし、「3年目に損益分岐」「5年後累積黒字」などを具体的数字で示す。労働生産性がどの程度上がるか(付加価値額)も合わせて強調すると説得力が増します。
5. 審査で重視される財務指標をどう改善・ストーリー化するか
5-1. 減価償却費(設備投資額)
- 投資回収期間を明示
「○年で投資回収し、耐用年数を超えて利益貢献が続く」など説明 - 設備投資額と会社規模のバランス
「前年売上の◯%程度の投資」など、無理のない範囲を数値化
5-2. 営業利益
- 3年以内の黒字化目標
初年度赤字でも3年以内に営業利益プラス転換するシナリオが望ましい - 損益分岐点分析
「何件の販売で損益分岐を突破し、いつ黒字化か」を明示すれば説得力アップ
5-3. 付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)
- 年平均3%以上成長を目安
ものづくり補助金などでは採択要件となった指標。新事業進出補助金でも重要視される可能性大 - 人件費や雇用増の意義
従業員の給与アップや新規雇用で地域経済へ貢献する点もアピールになる
5-4. 自己資本比率
- 投資後も一定水準を維持
大幅に低下しないか、将来的に改善する見込みがあるか審査される - シミュレーションを用意
「初年度に◯%まで低下するが3年後◯%へ回復」など、数字で示す

6. 金融機関等の支援コメント活用:推薦状・つなぎ融資の効果
6-1. 推薦状・支援コメントのメリット
- 融資証明で安心感を与える
「主要取引銀行が計画を評価し、融資を内諾している」旨を申請書に書けば、資金面の信頼度が高まる - 第三者のお墨付き
銀行や商工会議所など外部支援機関の推薦状があれば、審査員の心理的にもプラス評価が期待できる
6-2. つなぎ融資の確約
- 後払い補助金の資金ショートを防ぐ
補助事業では支出先行→後日補助金入金という流れ。つなぎ融資があると事業実行の確実性が高まる - 「融資内諾書」添付で採択率アップ?
公式の加点項目ではなくとも、実際の採択事例で好印象を得ているケース多数
6-3. 取得方法
- メインバンクに早め相談
事前に事業計画を見せ、融資実行や推薦状をお願いする - 認定支援機関の確認書
税理士や金融機関に計画を確認してもらい、書類を発行してもらう(ものづくり補助金では必須だった)
ポイント: 資金調達力を補強するため、銀行や支援機関を巻き込むと計画の信用度が上がる。特に大型投資を伴う事業では「金融機関の太鼓判」が有効です。
7. 採択計画に共通する財務構成の工夫
7-1. 3年以内に黒字化するシナリオ
- 赤字スタートはOKだが早期黒字転換が鉄則
「投資後3期目には営業利益がプラス」になる道筋を数字で示す - 損益分岐点の明示
どのタイミングで売上が損益分岐を超えるのか、因果関係を細かく説明
7-2. 補助事業終了後の持続的成長
- 5年後に財務体質が強化される構図
投資回収だけでなく、自己資本比率や利益率が向上する長期目標も書く - 設備・ノウハウの横展開
「補助事業で得た技術をさらに活かして売上◯倍に拡大」など、シナリオに広がりを持たせる
7-3. 雇用・地域貢献への配慮
- 給与総額アップや新規雇用
付加価値額向上の一部として、人件費増を前向きに捉える - 地域産業への波及効果
地元企業との取引拡大や地域の活性化を財務計画にも反映
7-4. 全体の整合性
- 定性的な戦略と定量的な数字を一致させる
市場分析→施策→売上・利益計画まで一貫したストーリーを構築 - 分かりやすい表やグラフ
5年分の収支計画を一覧表にまとめ、可視化して説明
8. まとめ:財務計画で採択率を高めよう
今回の記事では、2025年度「新事業進出補助金」の採択率アップを目指すうえで重要な財務計画(PL・BS・CF)の作り方を解説しました。製造業・飲食業・ITサービス業それぞれの事例を取り上げ、「3年以内の黒字化」「付加価値額の向上」「自己資本比率の維持・改善」「キャッシュフロー管理」など、審査員が注目するポイントを具体的に示してきました。
特に、
- 減価償却費の扱いと投資回収期間
- 付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年3%以上増
- 自己資本比率が大幅に低下しないシナリオ
- 早期黒字化(3年以内)
はどの業種でも共通して重要視されます。また、金融機関や認定支援機関の推薦状・つなぎ融資内諾など、資金面の裏付けを申請書に示すことで、計画の実現可能性を高めている企業が多い点も見逃せません。
8-1. 最終チェックリスト
項目 | チェック内容 |
---|---|
PL(損益計算書) | ・3年以内黒字化シナリオか? ・減価償却費を含めた投資回収期間を明示? ・売上根拠は具体的か? |
BS(貸借対照表) | ・自己資本比率が何%まで下がり、いつ回復するか? ・流動比率など短期支払い能力も確保? |
CF(キャッシュフロー) | ・補助金は後払い、つなぎ資金の手当は十分? ・何年目に営業CFが黒字化? |
付加価値額の向上 | ・年平均3%以上増を狙えるか? ・人件費・減価償却費含めて生産性アップを示せるか? |
金融機関や支援機関との連携 | ・認定支援機関の確認書を取得? ・銀行の推薦状 ・つなぎ融資内諾書はあるか? |
全体ストーリーの整合性 | ・定性的な市場分析・戦略と数値計画が矛盾していないか? ・補助事業終了後の成長シナリオは? |
8-2. 追加アドバイス
- 財務が苦手なら税理士・中小企業診断士・金融機関などの専門家に早め相談
- 「採択後に資金調達できない…」という事態を防ぐため、融資先との連携は必須
- 申請書では数字を表やグラフで可視化し、限られた文字数の中でもインパクトを出す
当サイト(HOJOLAB|補助金・助成金 × AI活用メディア)では、これまでにも「ものづくり補助金」「IT導入補助金」など大規模補助金の申請支援実績を調査し、多くの成功・失敗例を研究してきました。そこから導き出された結論は、「財務計画をしっかり作る企業ほど採択率が高い」ということです。
補助金事務局も「しっかりした計画で申請してほしい」と繰り返しアナウンスしており、数字が裏付けるストーリーこそが審査を突破するカギと言えます。ぜひ今回のポイントを参考に、自社の事業戦略と財務計画をじっくり組み立ててみてください。

【著者情報】HOJOLAB(補助金・助成金 × AI活用メディア)
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補助金活用は「事業成長の大きなチャンス」であり、財務計画がうまくハマれば採択後の成長スピードが格段にアップします。ぜひ今回の記事を参考に、2025年度の新事業進出補助金に挑戦してみてください。あなたのプロジェクトが成功し、地域経済や社会に新たな価値をもたらすことを当サイトも応援しています。頑張ってください!