2025年は企業経営を取り巻く環境が大きく変化しており、インボイス制度の開始や賃上げの要請など、中小・小規模事業者にとってもさまざまな対応が求められています。そうした状況下で注目されているのが、小規模事業者持続化補助金(成長・分配強化枠)です。2025年5月1日から始まる新たな公募(例:第17回公募)では6月13日が応募締切となる予定で、事前に商工会・商工会議所から発行される「事業支援計画書(様式4)」取得締切が6月3日と発表されています。申請を検討している方はスケジュールに十分注意しつつ、早めに準備を進めましょう。
本記事では、「成長枠」の制度概要や対象事業者、申請時の加点対策、計画書の書き方などを初心者にもわかりやすく解説します。採択のためのポイントや実際の成功事例も紹介していますので、ぜひ最後までご覧いただき、補助金を活用してビジネスを一歩前に進めるヒントにしてください。

1.小規模事業者持続化補助金(成長枠)とは
補助金の基本概要
小規模事業者持続化補助金(以下、持続化補助金)は、小規模事業者が自社の販路開拓や生産性向上のために行う取り組みを支援する国の制度です。通常枠では上限50万円・補助率2/3が基本ですが、2021年度より新設された成長・分配強化枠(成長枠)では、補助上限が大幅に拡大し最大200万円が支給される可能性があります。
成長枠の特徴
- 補助上限額:200万円
- 補助率:2/3
- 赤字事業者の場合は3/4
- 要件:賃上げ(地域別最低賃金+30円以上)や事業拡大に積極的に取り組むこと
- インボイス特例:元免税事業者が適格請求書発行事業者への登録を行った場合、上限額が50万円加算される
2025年度も年に複数回の公募が行われる見込みで、1回の募集期間は3か月前後設定されることが多いです。第17回公募(例)では、2025年5月1日から申請受付が始まり6月13日に締切となる予定ですので、余裕を持った書類準備が肝心となります。
2.対象となる事業者の条件
小規模事業者の定義
持続化補助金を利用できるのは、文字通り「小規模事業者」と定められた範囲の企業・個人事業主です。業種により常時使用する従業員数の上限が異なり、たとえば下記のように定義されています(代表者や役員は含まず、パート・アルバイトを含む常勤の従業員をカウント)。
- 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く):従業員5人以下
- 製造業・その他の業種:従業員20人以下
NPO法人や特定非営利活動法人などの法人も、要件を満たせば対象に含まれます。一方、公序良俗に反する事業などは対象外となるため、公募要領で最新情報を確認しましょう。
成長枠の追加要件
成長・分配強化枠を利用するためには上記小規模事業者であることに加え、賃上げや事業規模拡大への明確な取り組みが求められます。具体的には、以下の条件が代表例です。
- 事業場内最低賃金が地域最低賃金+30円以上
- 賃金台帳などで賃上げを証明できる書類を用意
- 補助事業終了時に要件未達の場合は補助金が交付されないリスクあり
また、申請時には商工会・商工会議所から発行される「事業支援計画書(様式4)」の添付が必須です。初めての方は特に、提出期限の数週間前には認定支援機関へ相談を始める必要があります。
3.採択されるためのポイント(審査項目と加点構造)
書面審査の観点
持続化補助金では、提出された経営計画書・補助事業計画書の内容を中心に審査が行われます。主にチェックされるポイントは以下の通りです。
- 自社の現状分析
- 市場や顧客ニーズ、強み・弱みを的確に把握しているか
- 経営方針・目標と計画の整合性
- 分析結果に基づいた経営方針が妥当か
- 具体的な目標設定と取組内容が噛み合っているか
- 補助事業計画の有効性・実現可能性
- 取り組み内容が自社の課題解決に繋がるか
- 新たな価値創出やデジタル技術の活用など先進性があるか
- 積算根拠の透明性
- 補助対象経費の見積もりが適切か
- 計上に不明点や過大な内容がないか
書類審査のみでの採否判定となるため、計画書内でいかに具体的かつ矛盾なく説明できるかが重要です。
加点措置の構造
持続化補助金の審査では、政策的優先事項を満たす事業者に加点を与える仕組みがあります。たとえば次のような項目に該当すると、加点が期待できます。
区分 | 代表的な加点項目 |
---|---|
重点政策加点 | 賃金引上げ、震災関連、特定地域(被災地域等)の支援など |
政策加点 | 事業継続力強化計画認定、経営力向上計画認定、事業承継加点、過疎地域加点、創業・後継者支援など |
特に賃上げ加点は成長枠要件と連動するため、計画書には必ずわかりやすく取り組み内容を記載するのがポイントです。後述する事業継続力強化計画の策定や、経営力向上計画の認定も合わせて行えば、より採択されやすくなるでしょう。
4.加点対策:主要項目の具体例
賃上げ加点(賃金引上げ加点)
- 地域別最低賃金+30円以上への引き上げを申請時に宣誓
- 賃金台帳や計画書で根拠を提示
- 赤字でも賃上げを行う場合は「赤字賃上げ特例」も適用される可能性あり
- 補助事業終了時に達成していない場合は不支給リスクがあるため、実現可能な賃金設定が大切
事業継続力強化計画の策定
- BCP(Business Continuity Plan)認定として防災・減災の取組を計画
- 国の認定を受けると資金繰り支援や税制優遇のメリットも
- 認定に1~2ヶ月程度かかる場合があるため早めに申請
- 補助金申請時に認定証の写しを添付し、加点を狙う
認定支援機関(商工会・商工会議所)での確認
- 補助金申請要件として様式4「事業支援計画書」の発行が必須
- 事前相談で事業計画のブラッシュアップができ、不備も減らせる
- 採択率向上に直結するため、申請締切の1か月以上前から相談を開始すると安心
その他の加点要素
- 経営力向上計画の認定
- 事業承継加点(高齢代表者からの後継者への事業承継など)
- 創業3年以内の新規事業
- 過疎地域での事業展開
- 女性活躍や子育て支援を推進する行動計画 など
自社が該当する項目は公募要領で要件をよく確認し、見逃さずにアピールしましょう。
5.計画書の書き方:重要様式と作成のコツ
主要様式:様式2・様式3
- 様式2:経営計画書兼補助事業計画書①
- 自社の現状分析(強み・弱み、顧客・市場、課題など)
- 経営方針・目標設定
- 補助事業計画(何をどのように実施し、どんな効果を狙うのか)
- 様式3:補助事業計画書②
- 具体的な実施スケジュールや資金計画
- 経費の積算根拠と内訳
計画書作成のポイント
- 現状・課題の明確化
- 「市場規模はどうか」「自社の競合優位性は何か」などをデータや事実で裏付け
- 経営方針・目標設定の具体化
- 「売上○%増」「新規顧客○名獲得」など、数値目標を示す
- 補助事業計画の有効性
- なぜこの施策が課題解決に必要なのかを論理的につなげる
- デジタル技術の導入や新商品開発など、独自性・先進性をアピール
- 実行体制・リスク対策の明示
- 担当者は誰か、外注先・協力先はあるか
- スケジュール管理・リスク対応策
- 積算根拠の適切性
- 見積もり取得先や数量・単価の根拠を明確に
- 重複計上や過度な水増しはNG
審査員は「自社の成長戦略・課題解決ストーリーの中に、この補助事業が不可欠かどうか」を見ています。計画に一貫性があり、具体性・実現可能性が高いと判断されれば評価が高まります。
ボリューム・書式
- 様式2・3合わせて最大8ページ程度(公募要領で上限が指定される場合あり)
- 箇条書きや表を使い、読みやすいレイアウトに配慮
- 文字数が少なすぎると熱意が伝わらず不利になる可能性大
- 誤字脱字や整合性のチェックを徹底(第三者の目で確認を推奨)
6.実際の採択事例:業種別成功パターン
飲食業(カフェ)
- 課題:新規顧客の獲得
- 補助事業:SNS広告の出稿、新メニュー試食イベントの開催
- 成果:口コミが広がり、来店客が月20%増加
サービス業(美容室)
- 課題:予約管理の煩雑さ、集客不足
- 補助事業:オンライン予約システム導入、Instagram等SNS運用強化
- 成果:電話対応が半減し、顧客管理の効率化&売上15%アップ
小売業(セレクトショップ)
- 課題:店舗だけでは売上拡大に限界
- 補助事業:自社ECサイトの立ち上げ、インスタ広告出稿
- 成果:EC売上が前年比2倍に伸長し、実店舗売上も上積み
観光業(旅館)
- 課題:インバウンド需要を取りこめていない
- 補助事業:多言語対応ウェブサイト&オンライン予約システム構築
- 成果:外国人観光客の直接予約30%増
IT業(ソフトウェア開発)
- 課題:競合他社との差別化不足
- 補助事業:自社クラウドサービス開発による製品価値向上
- 成果:新規契約数が20%増加し収益アップ
福祉(介護サービス)
- 課題:スタッフの事務負担が大きく人手不足気味
- 補助事業:タブレット端末導入&介護記録の電子化
- 成果:事務作業時間が半減し、本来業務に集中できる体制を確立
いずれの事例も、「具体的な課題」→「補助事業による解決策」→「実施後の効果」が明確です。自社の状況に置き換えながらアイデアを膨らませ、採択率アップに繋げましょう。
7.まとめ
最後に、今回解説したポイントを再整理します。
- 小規模事業者持続化補助金(成長枠)は、通常枠より高い上限額(最大200万円)で賃上げ・事業拡大を後押しする制度
- 賃上げや事業継続力強化計画の認定など、加点項目を満たすと採択率がアップ
- 申請時には商工会・商工会議所の事業支援計画書(様式4)が必須で、締切直前の駆け込みは危険
- 計画書(様式2・3)での具体性とストーリー性が採否を左右し、積算根拠の明確化も重要
- 業種別の採択事例から、自社の課題解決策をイメージしよう
補助金申請という取り組みは、単に資金を得るだけでなく、自社の現状を客観的に分析して課題や目標を明確化する機会にもなります。申請にあたり不明点があれば、必ず商工会・商工会議所や認定支援機関などに早めに相談することをおすすめします。
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本記事を通じて、「小規模事業者持続化補助金(成長枠)」の概要や申請の流れ、採択率を上げるポイントを把握いただけたでしょうか。2025年は賃上げやインボイス対応など、中小企業にとって変化の大きい年です。補助金を上手に活用しながら、事業をより強固で持続的な形に成長させるチャンスでもあります。ぜひ前向きに申請を検討してみてください。もしご不明点や不安があれば、早めに認定支援機関や当サイトへご相談いただければ幸いです。
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