結論から言うと、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」は、従来の「ものづくり補助金」の名称変更ではありません。公式サイトも、両者は異なる補助金だと明記しています。
名前にはどちらも「ものづくり」が入っていますが、申請する制度、選べる枠、基本要件、対象経費、公募時期が異なります。新しい名前に置き換わっただけだと考えると、確認する公募要領や事業計画を間違えかねません。
情報確認日:2026年8月31日
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回は、公募開始済み・申請受付前です。申請受付は2026年9月30日、締切は10月30日18時です。
従来のものづくり補助金は、直近の第23次公募が2026年5月8日に締め切られ、8月7日に採択結果が公表されています。
読みやすさのため、正式名称は本文中で「新制度」と「従来のものづくり補助金」に省略します。
ひと目で分かる違い
| 比較項目 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 従来のものづくり補助金(第23次) |
|---|---|---|
| 制度の関係 | 従来制度とは別の補助金 | 正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」 |
| 枠 | 革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠 | 製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠 |
| 主な対象 | 革新的な新製品・サービス、新製品・サービスと新市場への進出、輸出体制の強化 | 革新的な新製品・サービス開発、海外事業 |
| 付加価値額要件 | 年平均成長率4.0%以上 | 年平均成長率3.0%以上 |
| 一般事業主行動計画 | 企業規模にかかわらず、すべての申請者が応募時までに策定・公表 | 従業員21人以上が対象。交付申請時までに策定・公表 |
| 補助上限 | 枠・従業員数により最大7,000万円。賃上げ特例で最大9,000万円 | 製品・サービス高付加価値化枠は最大2,500万円、賃上げ特例で最大3,500万円。グローバル枠は3,000万円 |
| 2026年8月31日の状態 | 第1回公募中。9月30日申請受付開始 | 第23次は締切済み。採択結果も公表済み |
上限額だけを見ると新制度の方が大きく見えます。ただし、最大9,000万円は新事業進出枠またはグローバル枠で、従業員数と賃上げ特例の条件を満たす場合の上限です。すべての申請者が選べる金額ではありません。
名前は似ていても、同じ制度ではない
新制度の公式サイトには、旧「中小企業新事業進出補助金」と「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」のどちらとも異なる補助金だと書かれています。
したがって、従来のものづくり補助金で使った公募要領や申請様式を、そのまま新制度へ流用することはできません。過去の計画を使う場合も、新制度の対象者、対象事業、基本要件、審査項目、提出書類に合わせた確認が必要です。
一方で、制度設計がすべて変わったわけでもありません。新制度の「革新的新製品・サービス枠」は、従来の「製品・サービス高付加価値化枠」と対象事業がよく似ています。
どちらも、顧客へ新しい価値を届ける新製品・新サービスの開発が対象です。機械やシステムを導入するだけの計画、既存の生産・提供プロセスを改善するだけの計画は対象になりません。機械装置・システム構築費が必須で、従業員数ごとの基本上限も750万円から2,500万円です。
「革新的新製品・サービス枠は、従来枠に近い。ただし別制度なので、新しい公募要領で確認し直す」。ここが最初の整理になります。
新制度は3つの事業目的から枠を選ぶ
新制度には、事業の向かう先が異なる3つの枠があります。
革新的新製品・サービス枠
自社の技術力などを生かし、顧客へ新しい価値を提供する製品・サービスを開発する枠です。同業他社にすでに相当程度普及しているものや、単純な設備導入は対象になりません。
補助率は中小企業者が原則1/2、小規模企業・小規模事業者と再生事業者は2/3です。基本上限は従業員数に応じて750万円から2,500万円で、賃上げ特例を使う場合は最大3,500万円まで上がります。補助下限は100万円です。
新事業進出枠
自社にとって新しい製品・サービスを、自社にとって新しい市場へ出す計画が対象です。「新しい商品」か「新しい顧客層」の片方だけでは足りず、両方を満たす必要があります。
補助率は中小企業者が原則1/2で、地域別最低賃金引上げ特例を使う場合は2/3です。基本上限は従業員数に応じて2,500万円から7,000万円、賃上げ特例を使う場合は最大9,000万円。補助下限は750万円です。機械装置・システム構築費か建物費のどちらかを、必ず対象経費に含めます。
グローバル枠
新しい海外市場へ輸出するため、国内の製造・提供体制を強化する計画が対象です。補助率は2/3で、上限は新事業進出枠と同じく最大7,000万円、賃上げ特例で最大9,000万円です。
従来のグローバル枠は、海外への直接投資、輸出、インバウンド対応、海外企業との共同事業を含んでいました。新制度のグローバル枠は、海外市場開拓を目的とする国内の輸出体制強化へ対象が整理されています。
基本要件は付加価値額だけで比べない
数字で大きく変わったのは、付加価値額の目標です。従来の第23次公募は年平均成長率3.0%以上でしたが、新制度では4.0%以上になりました。
一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高くする要件は共通しています。目標を達成できなかった場合、補助金の返還が生じることがあります。
見落としやすいのが、一般事業主行動計画です。従来の第23次公募では従業員21人以上が対象で、交付申請時までの策定・公表が求められていました。新制度では、従業員数にかかわらず、すべての申請者が応募時までに「両立支援のひろば」で公表する必要があります。新制度には、子育て等に関する職場環境整備へ取り組む要件もあります。
金融機関などから資金提供を受ける場合は、資金提供元による事業計画の確認も必要です。補助率と上限だけで候補を決めず、3年から5年の計画期間で要件を実行できるかまで確認してください。
対象経費は枠によって違う
両制度とも、機械装置・システム構築費、技術導入費、外注費、クラウドサービス利用費などが候補になります。ただし、申請書へ記載した経費がすべて認められるわけではありません。
新制度では、革新的新製品・サービス枠にも広告宣伝・販売促進費が対象経費の区分として入っています。新事業進出枠とグローバル枠では建物費も候補になり、グローバル枠では海外旅費と通訳・翻訳費も対象区分に含まれます。
従来の第23次公募で使えた経費だから新制度でも使える、あるいは新制度の別枠で認められるから自社の枠でも使える、とは限りません。枠を決めた後、その枠の対象経費と個別条件を公募要領で確認する必要があります。
現在の公募状況も分けて確認する
新制度の第1回公募は、2026年6月29日に始まりました。当初は8月31日申請受付、9月30日締切の予定でしたが、現在は次の予定へ変更されています。
- 申請受付:2026年9月30日
- 応募締切:2026年10月30日18時
- 採択発表:2027年1月予定
従来のものづくり補助金は、第23次公募が2026年5月8日に締め切られ、8月7日に採択結果が公表されました。採択後の交付申請や補助事業は、従来制度の公式サイトと手引きに従います。新制度のサイトへ手続きが自動的に移るわけではありません。
今後のものづくり補助金の公募を推測して、「新制度へ統合された」「従来制度は廃止された」と決めつけることもできません。新規申請では、申請しようとする時点の両公式サイトを確認してください。
どの枠から確認すればよいか
自社の計画を、補助金名ではなく事業目的から分けると迷いにくくなります。
- 新しい製品・サービスを開発する:新制度の革新的新製品・サービス枠を確認する
- 新しい製品・サービスを、新しい顧客層へ出す:新事業進出枠を確認する
- 新しい海外市場へ輸出するため、国内体制を強くする:グローバル枠を確認する
- 従来のものづくり補助金で採択・交付決定を受けている:従来制度の公式手続きと事務局を確認する
過去に新事業進出補助金、事業再構築補助金、ものづくり補助金へ採択された方は、新制度の申請制限にも注意が必要です。新制度のFAQでは、過去3年間に対象3制度の交付決定を合計2回以上受けた事業者や、新制度の締切日から16か月以内に対象3制度で採択された事業者、申請締切日時点で補助事業を実施中の事業者は対象外とされています。
補助率より先に、利益・キャッシュ・時間を確認する
新制度の補助金は、補助事業の完了後に実績報告と確定検査を経て支払われます。交付決定前に契約・発注した経費は対象になりません。大きな上限があっても、先に必要な資金と、入金までの期間を自社で支えられなければ計画は進みません。
制度を選ぶ前に、次の4点を数字にしておくと判断しやすくなります。
- その投資で増やしたい売上や粗利はいくらか
- 補助対象外経費を含め、先に用意できる資金はいくらか
- 導入後の運用に、毎月どれだけの時間と費用がかかるか
- 補助金がなくても実行する価値があるか
補助金は投資負担を軽くする手段です。対象になりそうな制度から事業を作るのではなく、利益を残せる事業計画を作った後、その一部に使える制度があるかを確認します。
よくある質問
新制度は、ものづくり補助金の後継ですか
公式には別の補助金です。名称変更や単純な統合とは扱わず、それぞれの公式サイトと公募要領を確認してください。
革新的新製品・サービス枠は、従来のものづくり補助金と同じですか
対象事業と基本上限は近いものの、別制度です。付加価値額要件、一般事業主行動計画、職場環境整備、対象経費、申請書類は新制度のルールで確認します。
設備を新しくするだけでも申請できますか
新制度の革新的新製品・サービス枠では、新製品・新サービスの開発を伴わない単純な機械・システム導入は対象外です。新事業進出枠も、自社にとって新しい製品・サービスと新しい市場の両方が必要です。
以前のものづくり補助金へ採択されていても申請できますか
一律に申請不可ではありませんが、過去の交付決定回数、採択時期、現在の補助事業実施状況による制限があります。同じ経費を国の補助制度で重複して受けることもできません。新制度の公募要領とFAQで自社の状態を確認してください。
まとめ
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金と、従来のものづくり補助金は別制度です。新制度の革新的新製品・サービス枠は従来枠に近い一方、新事業進出枠とグローバル枠、付加価値額4.0%要件、全申請者に求められる一般事業主行動計画、対象経費、公募日程に違いがあります。
まず、自社が取り組むのは「新製品・新サービスの開発」「新製品・新市場への進出」「新しい海外市場への輸出」のどれかを決めます。そのうえで、自己資金、運用費、賃上げ、投資回収を確認し、該当する枠の最新公募要領へ進んでください。
補助金名を決める前に、投資の進め方を整理する
売上、利益、キャッシュ、時間のどこを変えたいかがまだ曖昧なら、3分 投資ルート診断で次に整理する項目を確認できます。登録は不要です。補助対象や採択可否を判定する診断ではありません。