
2025年現在、生成AIの急速な普及と Windows 10 延長サポート終了(2026 年10 月)を前に、中小企業が DX を進める最大のチャンスが到来しています。本記事では従業員15名・売上2億円のモデル企業を想定し、AI チャットボットと業務 PC 15 台を導入する際に「新事業進出補助金」と「省力化投資補助金」を合算活用する方法を徹底解説します。
読むメリット
- DX 補助金の最新制度と併用ルールが分かる
- AI+PC 投資 566 万円を 自己負担 283 万円まで圧縮する手順を具体化
- 経費科目の切り分け方を例示し、審査通過率を高めるポイントを把握
- FAQ でクラウド利用料・デスクトップ機・電子帳簿保存法対応費の可否を即確認
DX 補助金の全体像を押さえる
生成 AI シフトで脚光を浴びる「新事業進出補助金」
- 旧・事業再構築補助金を発展させた制度。AI・IoT を活用した新分野展開に手厚い。
- 従業員20名以下の補助上限は 2,500 万円(賃上げ達成で 3,000 万円)、補助率 1/2。
- クラウド利用料や外注開発費も対象となるため、SaaS 型 AI の初年度コストまでカバーできる。
設備入替えを後押しする「省力化投資補助金〈カタログ型〉」
- カタログ掲載された PC・タブレット・ロボット等を購入すると 定率 1/2 を即時申請可能。
- 申請書式が簡易(4~6 ページ)で、交付決定まで約 2 か月とスピーディー。
- 賃上げ特例を満たせば補助上限が 250 万円上乗せされる。
併用時の基本ルール
- 補助対象経費の重複計上禁止:同一 PC を両制度で申請しない。
- 同一会計年度でも併願可:事業計画を分け、要件チェックシートを添付。
- 賃上げ計画は同一値に統一:人件費シミュレーションを双方の計画書に転記する。
モデル企業の課題と導入シナリオ
現状のボトルネック
指標 | 現状 | 課題 |
---|---|---|
顧客問い合わせ対応 | 電話・メールで 月 300 件 | 担当 1 名がフルタイム拘束、応答漏れ 12 % |
PC 環境 | Win10/メモリ 8 GB/HDD 500 GB | 処理待ちロス 1 人 15 分 / 日、年 70 時間損失 |
DX 投資歴 | Office365 のみ | 社内データが分散し生成 AI 活用不可 |
AI+PC 導入後の効果目標
- FAQ 応答時間を 60%短縮(平均 3 分→1.2 分)
- 年間総労働時間を 105 時間削減(15 分×15 人×280 日)
- PC 障害対応コストを 年間 30 万円削減(保守外注費/機会損失含む)
- 生成 AI 活用で 受注率+5 pt、売上 +400 万円を 3 年内に達成
2補助金合算の費用シミュレーション
投資内訳
投資項目 | 内訳 | 単価 | 数量 | 小計 |
---|---|---|---|---|
AI チャットボット | 初期設定 50 万円+運用 96 万円+連携開発 200 万円 | — | 1 式 | 296 万円 |
ノート PC | Core i7/16 GB/512 GB SSD | 18 万円 | 15 台 | 270 万円 |
合計投資額 | — | — | — | 566 万円 |
補助金適用と自己負担
経費区分 | 補助率 | 補助金額 | 自己負担 |
---|---|---|---|
AI チャットボット | 1/2(新事業進出補助金) | 148 万円 | 148 万円 |
ノート PC | 1/2(省力化投資補助金) | 135 万円 | 135 万円 |
合計 | — | 283 万円 | 283 万円 |
キャッシュフローへの影響
- 補助金交付までの立替期間:約 6~8 か月 → 手形割引枠・短期借入でブリッジ調達を計画。
- AI チャットボットは 月額利用料 8 万円を 12 か月先払いで対象 → 2 年目以降は通常経費処理。
- PC 資産の耐用年数は 4 年:減価償却で 年間 68 万円費用化し、税負担を平準化。
審査で勝つ経費科目テクニック
- AI ライセンスは「クラウド利用料」に集約
- 初期費用と月額 12 か月分をセット計上することで「導入後 1 年以内に効果検証」という審査観点に合致。
- システム連携費は「外注費」で明示し内容を具体化
- 既存 POS/基幹システムと API 連携し、入力工数▲ 90 %と 定量効果を記載。
- PC 本体は「カタログ掲載設備費」、モニター・ドッキングは自己負担
- 補助金対象額を圧縮しコスト効率を示すと、評価項目「資金計画の妥当性」で加点を得やすい。
- 教育コンテンツを「研修費」に分離し、DX 人材育成を強調
- e‑ラーニング 10 万円×15 名=150 万円 → うち 75 万円補助。
- ソフト保守は 12 か月分のみ対象
- 13 か月目以降は自己負担にし、長期的な自走体制を審査員に印象づける。
よくある質問(FAQ)
Q1. クラウド AI の利用料は補助対象ですか?
A. 契約初年度(最長 12 か月)分のみが対象です。13 か月目以降は自己負担になりますが、審査では「費用対効果を 1 年以内に検証できる」点が評価されます。
Q2. デスクトップ PC は省力化投資補助金で購入できますか?
A. カタログに掲載されたモデルであれば可能です。ただし「省スペース化」「電力削減効果」など省力化の定量指標を示すと採択率が高まります。
Q3. 電子帳簿保存法対応ソフトの費用も対象になりますか?
A. AI チャットボットや PC と連携し 業務効率化に寄与する範囲(例:請求書自動仕訳)であれば「ソフトウェア費」として対象です。単体導入では対象外となるため注意してください。
Q4. 2つの補助金を並行申請すると審査に不利になりませんか?
A. 経費の重複を避け、類型要件と賃上げ計画を統一していれば問題ありません。むしろ投資全体を分散させることで財務リスクを抑え、計画実現性の評価が上がる傾向にあります。
まとめ
従業員 15 名・売上 2 億円規模の企業が AI チャットボットとノート PC 15 台を導入する場合、「新事業進出補助金」と「省力化投資補助金」を併用すれば総投資 566 万円の 50 %=283 万円を補助金でカバーできます。効果検証期間を 1 年に設定し、経費科目をクラウド利用料・外注費・カタログ設備費に切り分けると審査で加点を得やすく、DX 戦略の実行可能性も高く評価されます。
次にやるべきアクション
- 自社の賃上げ計画(最低賃金+30 円)を 2025 年度版に更新
- AI チャットボットの要件定義書を作成し、外注見積 2 社以上を取得
- カタログ掲載 PC から候補機種を絞り、省力化補助金の申請書ドラフトを 8 月上旬までに作成
- ブリッジ資金として短期借入枠 300 万円を金融機関と事前協議
- 補助金交付後も効果検証を続けられるよう、KPI ダッシュボードのテンプレートを準備