
2025年は「生成AI元年」と呼ばれるほど、ChatGPT や Stable Diffusion などの生成AIを活用した業務改革が中小企業にも一気に拡大しています。しかし GPU サーバやクラウド API の利用料は高額で、補助金・助成金を活用しなければ採算が合わない という声が多数。本記事では AI導入に使える国の主要な補助金・助成金4制度 を徹底比較し、採択率を高める具体的な申請ステップと年間スケジュールをまとめました。
- AI関連の補助金は実質4制度のみ と一目でわかる
- 各制度での 生成AI活用事例 と費用区分を具体的に解説
- 申請ミスを防ぐ 8ステップのチェックリスト を公開
- 四半期ごとの 年間カレンダー で今やるべき作業が明確
- GPUやAIコンサル費を計上できる条件を FAQ で即確認
第1章 中小企業の AI 導入を取り巻く最新潮流
コロナ禍で DX が加速して以降、人手不足とコスト高 を背景に「生成 AI による省力化」「自社データでの学習による高付加価値化」が経営課題の最前線に立ちました。
- 2025 年 1‑6 月の総務省「通信利用動向調査」速報では、従業員 300 人未満企業の 43.7 % が「生成 AI を何らか活用」と回答。
- ただし 初期投資が壁。GPU サーバ(NVIDIA H100×4)は 1 台 2,000 万円前後、クラウド API でも年間数百万円規模になる。
- その解決策として 国の補助金・助成金に AI 導入が明示的に加わった のが 2024 年度以降の大きな変化。
第2章 主要 4 制度の違いと向き・不向き
制度 | 補助上限/率 | 対象経費(AI 関連) | 代表的な生成 AI 活用例 | 向いている企業像 |
---|---|---|---|---|
新事業進出補助金 | 750 万~7,000 万円補助率 1/2 | GPU サーバ、クラウド利用料、専門家費 | ChatGPT と LangChain で海外顧客対応チャットボット | 新市場へ参入したい製造・EC 事業者 |
省力化投資補助金 | 最大 8,000 万円(特例 1 億円)補助率 1/2 | AI 搭載ロボ、画像解析装置、GPU 制御 PC | Stable Diffusion+Vision AI で外観検査自動化 | 生産ラインを自動化したい中規模メーカー |
IT 導入補助金 | 5 万~150 万円(デジタルインボイス枠 450 万円)補助率 1/2 | SaaS 型 AI、チャットボット、RPA | SaaS チャットボット「GMO 即レス AI」で FAQ 自動応答 | 少額でまず AI を試したい小規模事業者 |
ものづくり補助金 | 750 万~8,000 万円小規模 2/3、他 1/2 | GPU サーバ、AI 搭載装置、研究開発費 | 自社 LLM を H100×4 台で学習し工程最適化 | 研究開発型・ハイテク製造業 |
2‑1 制度選択の指針
- キャッシュ創出までの時間 …1 年以内 → IT 導入/省力化、長期 R&D → ものづくり
- 賃上げ義務の有無 …新事業進出・省力化は必須、IT 導入は緩い
- 自己資金余力 …補助率が 1/2 のため、資金調達計画が鍵
第3章 生成 AI 活用事例と費用計上のポイント
3‑1 新事業進出補助金 × ChatGPT
事例:多言語 EC サイトでのカスタマーサポートを ChatGPT で自動化。
経費区分:
- GPU サーバ → 機械装置費
- ChatGPT API 月額 → クラウド利用料
- プロンプト最適化コンサル → 専門家経費
成果:応答待ち時間 80 %短縮、海外売上 +35 %。
3‑2 省力化投資補助金 × Stable Diffusion
事例:金属部品のキズ検知用画像を SD で自動生成し、AI ビジョン検査と組み合わせ。
経費区分:
- 画像検査ロボット → 機械装置費
- SD 学習 PC → 周辺機器費
- モデル開発費 → 技術導入費
成果:検品人員 4 名 → 1 名、ライン停止時間 ▲70 %。
3‑3 IT 導入補助金 × SaaS チャットボット
事例:社内ヘルプデスクに FAQ ボット導入、月 600 件の問い合わせを自動回答。
経費区分:
- 初期設定費 → ソフトウェア導入費
- 月額利用料 1 年分 → 利用料
成果:総務工数 ▲40 %、社員満足度 +15pt。
3‑4 ものづくり補助金 × 自社 LLM
事例:設計図面と工程データを学習した独自 LLM を構築し、製造条件を最適化。
経費区分:
- H100 GPU サーバ → 機械装置費
- LLM 学習ソフト → システム構築費
- データ前処理外注 → 外注費
成果:試作回数 ▲50 %、開発リードタイム ▲30 %。
第4章 年間スケジュールカレンダーで見る締切と準備ロードマップ
四半期 | 新事業進出 | 省力化投資 | IT 導入 | ものづくり | 重点タスク |
---|---|---|---|---|---|
Q1(1‑3月) | ― | 第1回公募 | 第1‑2回募集 | 第19次締切 | 事業計画コンセプト設計 |
Q2(4‑6月) | 第1回公募 7/10 締切 | 第2回採択発表 | 第3回募集 | 第20次公募 7/25 締切 | 見積・賃上げ計画確定 |
Q3(7‑9月) | 採択結果 10 月 | 第3回公募 8/28 締切 | 第4‑5回募集 | 交付審査 | 電子申請・面談対策 |
Q4(10‑12月) | 交付申請 | 第3回採択 11 月 | 第6 回募集 | 第21次公募 | 実績報告・次年度計画 |
IT 導入補助金は原則月次締切、他制度は四半期ごとに大きく動くため “準備は前倒し” が鉄則。
第5章 失敗しない申請 8 ステップ チェックリスト
☑ 1. 公募要領最新版をダウンロードし「AI」「生成 AI」キーワードで全文検索
☑ 2. 導入目的・KPI(時間短縮・歩留まり改善など)を数値化して事業計画に明記
☑ 3. 賃上げ計画 を給与シミュレータで算出し、根拠資料を添付
☑ 4. 相見積 2‑3 社 取得、GPU は型番・VRAM 容量・単価を必ず記載
☑ 5. AI モデル学習フロー図(データ取得→学習→推論→評価)を添付し技術優位性を説明
☑ 6. 認定支援機関 または IT 導入支援事業者 にドラフトをレビュー依頼
☑ 7. gBizID プライム取得 と jGrants 権限付与 を申請 1 週間前までに完了
☑ 8. 申請後は エビデンスフォルダ を作成し、議事録やスクリーンショットをリアルタイム保存
第6章 FAQ – よくある疑問を即解決
Q1. 学習用 GPU は補助対象になりますか?
A. ものづくり補助金・省力化投資補助金では新品 GPU サーバが機械装置費として対象。IT 導入補助金はハード対象外です。
Q2. AI コンサルティング費用はどこに計上すればよいですか?
A. 新事業進出=専門家経費、ものづくり=技術導入費、IT 導入=導入支援費用で計上できます。
Q3. ハードとソフトを別々の制度で申請できますか?
A. 同一経費の重複は不可ですが、GPU サーバ→ものづくり補助金、ChatGPT API 利用料→IT 導入補助金のように 費目を分ければ併用可。
Q4. 生成 AI を使うと個人情報が心配です。補助金審査で不利になりますか?
A. セキュリティ対策(暗号化・アクセス制限)の記載があれば減点されません。むしろ リスク管理を明確に説明 すると評価が上がります。
Q5. 省力化投資補助金で PC 制御端末の費用は OK ですか?
A. IoT ロボットと一体導入する場合のみ「従装置」として計上可能。PC 単体では対象外です。
まとめ
生成 AI は中小企業の生産性を劇的に高める一方、初期投資コストがネックです。2025 年時点で AI 導入に使える国の支援策は 新事業進出・省力化投資・IT 導入・ものづくり の 4 制度。上限は 150 万円から 1 億円まで幅広く、GPU サーバや ChatGPT API も計上可能です。本記事の比較表とカレンダーで自社に合った制度を特定し、8 ステップのチェックリストに沿って書類を整えれば、採択率を大きく高められます。
次にやるべきアクション
- 自社の AI 導入目的と KPI を整理し、どの制度が最適か 15 分で診断
- gBizID プライムをまだ取得していない場合は 今日申請
- GPU・SaaS など購入候補のベンダーに 相見積を一括依頼
- 認定支援機関に連絡し、ドラフトレビュー日程を確保
- 生成 AI のセキュリティ対策(アクセス権限・ログ管理)を社内で決定し計画書に反映