
生成 AI は「検索」「翻訳」「設計」「検査」まで一気に活用領域が拡大し、中小企業が競争力を上げる切り札になりました。とはいえ GPU サーバーは 2,000 万円超、API もモデルごとに料金差が大きく、導入には資金面のハードルがあります。本記事では 2025 年時点で生成 AI 投資を支援できる 4 つの国補助金・助成金を網羅比較。OpenAI o3/o3‑Pro、Google Gemini 2.0 Flash/1.5 Pro、Anthropic Claude 4 シリーズまで最新料金と補助対象の可否を整理しました。
この記事で得られるメリット
- IT導入・省力化投資・新事業進出・ものづくり補助金の補助率・上限・締切を早見表で確認
- GPU 購入/クラウド GPU/API 利用料/研修費 の対象可否を一目で把握
- o3、Gemini、Claude のAPI 単価と年間コストを具体的に比較
- 制度別に採択率を高める計上テクニックと注意点を理解
- 最新スケジュールで申請準備のタイムラインを逆算できる
1. 生成 AI 導入を支援する4大補助金の全体像(2025 年版)
制度 | 補助上限/率* | 直近の締切 | 生成 AI 経費例 | 主要留意点 |
---|---|---|---|---|
IT導入補助金通常+セキュリティ枠 | 上限 350 万円率 2/3(小規模 4/5) | 3 次:2025/8/30 | ・ChatGPT(o3/o3‑Pro) / Claude / Gemini API 24 か月・AI SaaS 月額・Prompt 研修 | ハード対象外 |
省力化投資補助金〈一般型〉 | 上限 1 億円率 1/2(小規模 2/3)※1,500 万円超部分 1/3 | 第3回:7/1〜9/2 | ・GPU サーバー+産業ロボ / AI 検査装置・クラウド GPU(総額の1/3以内推奨) | 賃上げ計画必須 |
新事業進出補助金 | 上限 2,500 万(賃上げ特例 3,000 万)率 1/2 | 第1回:7/10 | ・GPU サーバー/API/外注開発・多言語化サイト | 新市場進出要件 |
ものづくり補助金〈第20次〉 | 上限 1,250〜3,000 万率 1/2(小規模 2/3) | 7/25 | ・GPU サーバー/クラウド GPU・AI 学習設備/ソフト | 付加価値+4 % |
*大幅賃上げ・GX 特例は割愛。
2. 経費区分 × 補助可否 早見マトリクス
経費項目 | IT導入 | 省力化 | 新事業進出 | ものづくり | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
GPU サーバー購入 | × | ◎ | ◎ | ◎ | 省力化は1/2(超過分1/3) |
クラウド GPU(API課金) | ◎¹ | △ | ◎ | ◎ | ¹24 か月上限 |
AI SaaS 月額・導入設定 | ◎ | △ | ◎ | ◎ | 省力化はシステム構築費 |
Prompt 最適化研修 | ◎ | × | ◎ | ◎ | IT導は役務費枠 |
電源・空調工事 | × | ◎ | ◎ | ◎ | IT導は不可 |
◎=対象 △=条件付き/限度あり ×=対象外
3. 主要モデル別 API 料金と補助計上のポイント
3‑1 API 単価ベンチマーク
モデル | 入力単価 | 出力単価 | 月 1 M in / 4 M out のコスト (円)* |
---|---|---|---|
OpenAI o3 | $0.002 / k tok | $0.008 / k tok | 約 5.4 万 |
OpenAI o3‑Pro | 0.02 | 0.08 | 約 54 万 |
Gemini 2.0 Flash | ≒0.009 | ≒0.04 | 約 1.0 万 |
Gemini 1.5 Pro | ≒0.078 | ≒0.312 | 約 83 万 |
Claude Sonnet 4 | 0.003 | 0.00375 | 約 12 万 |
Claude Opus 4 | 0.015 | 0.01875 | 約 156 万 |
*1 USD = 160 円換算。
3‑2 補助金との相性
モデル | IT導入 | 省力化 | 新事業進出 | ものづくり | 実務ヒント |
---|---|---|---|---|---|
o3 | ◎ | △ | ◎ | ◎ | コスパ高、上限 350 万を圧迫しにくい |
o3‑Pro | ◎※ | △ | ◎ | ◎ | ※API費が高め→役務費計上もセットで |
Gemini Flash | ◎ | △ | ◎ | ◎ | 低コスト、24 か月×Flashで上限余裕 |
Gemini Pro | ◎ | △ | ◎ | ◎ | 長文要約等の差別化に◎ |
Claude Sonnet | ◎ | △ | ◎ | ◎ | 汎用で API 単価も手頃 |
Claude Opus | ◎ | △ | ◎ | ◎ | 高付加価値案件用、ROI 計算要注意 |
4. 締切カレンダーと準備タイムライン(下期~2026 初)
2025 | 7 月 | 8 月 | 9 月 | 10 月 | 11 月 | 12 月 |
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IT導入 | ― | 8/30 | ― | 4 次公募 | ― | 5 次公募 |
省力化 | 公募中 | ― | 9/2 締切 | ― | 第4回公募 | ― |
新事業進出 | 7/10 締切 | ― | ― | 第2回締切 | ― | 第3回公募 |
ものづくり | 7/25 締切 | 集計期間 | — | 要領草案 | 公募準備 | 第21次発表? |
作業の目安
- 見積取得:締切 5〜6 週間前
- 賃上げ計画/金融機関確認書:4 週間前
- 事業計画最終稿:2 週間前
5. 制度別・採択率を上げる計上テクニック
5‑1 IT導入補助金
- ITツール登録済み SaaS/API しか申請できない ⇒ o3 / Gemini Flash など登録状況を要確認。
- 役務費 50 % 以内 に研修・保守を計上し、活用体制をアピール。
5‑2 省力化投資補助金
- GPU サーバー+AI カメラ+ロボ の組み合わせで 人時削減 → ROI ≤ 3 年 を必ず算出。
- クラウド費は総額の 1/3 以内に抑え、ハード主体を示す。
5‑3 新事業進出補助金
- 500 字概要で 「誰に × 何を × 生成 AI でどう差別化」 を明確化。
- 外注費は総額の 1/2 上限 → API + GPU + 外注開発で 経費分割表 を添付。
5‑4 ものづくり補助金
- 付加価値+4 % を GPU × AI 製品追加売上 で裏付け。
- GX 加点を狙い、CO₂ 削減量→電気料金削減を LCA 値で計算。
6. FAQ ― 今すぐ知りたい疑問を解消
Q | A(要点) |
---|---|
OpenAI o3‑Pro を12 か月だけ申請可能? | 可。ただし IT導は総額を 24 か月で見積り、期間途中のサービス変更は要事務局相談。 |
Gemini Flash 文字課金を token 換算する方法は? | 4 文字 ≒ 1 token で概算。1M 文字 = 250k token として見積書を作成。 |
GPU サーバー分割購入は省力化で不利? | 一括より ROI が伸びる可能性があるが、賃上げ KPI を満たせば補助率 2/3 を維持可。 |
API と GPU を同じ補助金で重複申請できる? | 新事業進出・ものづくりは可。経費区分を「設備費」「クラウド利用料」に分割記載する。 |
電源工事だけ別業者発注は対象? | 省力化・ものづくりは OK。ただし見積2社+仕様書を提出し関連性を明示。 |
7. まとめ
生成 AI 導入を支援する国補助金は IT導入・省力化投資・新事業進出・ものづくり の4本柱。ハード不可の IT導入でも o3 や Gemini Flash API を 24 か月分申請でき、小規模なら補助率 4/5。GPU 購入やロボ連携は省力化・新事業・ものづくりで 1/2 補助が狙えます。モデル単価は o3 が 1M 入出力 5.4万円、Gemini Flash 1万円と大差があり、API+GPU の組合せと補助率 を最適化する計画が採択への近道です。
次にやるべきアクション
- 使いたい API モデルの24 か月利用量 を試算し、IT導用見積を入手
- GPU サーバー構成とクラウド費を分けた 比較見積 を 2 社以上取得
- 賃上げ・付加価値・CO₂ 削減の KPI 表 を先に作成し、制度ごとに流用
- 締切カレンダーを iCal へ登録し、4 週間前に金融機関へ確認書依頼
- 他補助金と経費が重複しないよう Excel 区分表 で管理