
生成 AI の実運用が広がる 2025 年、学習や推論の計算処理を支える GPU サーバー への投資が急増しています。しかし、導入コストは 1 台 2,000 万円超と高額――そこで活用したいのが 国の中小企業向け補助金 です。本記事では、
- GPU サーバー導入コストの内訳
- IT導入補助金・省力化投資補助金・ものづくり補助金 の比較
- 補助金別の費用シミュレーション(クラウド活用シナリオ含む)
- 採択率を高める申請テクニック
をまとめて解説します。
1. GPU サーバー投資が加速する背景
1‑1 生成 AI の急拡大と計算資源不足
- 企業内 LLM(大規模言語モデル)や画像生成モデルの オンプレミス運用ニーズが顕在化
- クラウド GPU の長期レンタル費が 月額 380 万円/H100(24 か月で 9,120 万円)と割高
- 電力効率(1TFLOPS/W) が飛躍した H100 世代への更新需要
1‑2 GPU サーバー価格レンジ
構成 | GPU 枚数 | 参考モデル | 単価(税込) |
---|---|---|---|
最小構成 | H100 NVL ×1 | 富士通 PRIMERGY RX2450 M2 | 18,022,000 円 |
中間構成 | H100 80GB ×4 | HPC5000-XERGPU4R4S | 30,800,000 円 |
大規模構成 | H100 ×8 | 国内ベンダー平均 | 58,000,000 円前後 |
本稿では 最小構成(1 枚)=総額 20,522,000 円 のケースで試算します。
2. 補助金3選を徹底比較
2‑1 補助金ごとのハード・クラウド対象範囲
区分/経費 | IT導入(通常・セキュリティ枠) | 省力化投資(一般型) | ものづくり補助金(成長枠) |
---|---|---|---|
GPUサーバー本体 | × | ◎ | ◎ |
クラウド GPU 24 か月 | ◎ | △* | ◎ |
AI フレームワーク | ◎ | ◎ | ◎ |
OS・仮想化 SW | ◎ | ◎ | ◎ |
保守(3 年) | △(1 年上限) | ◎ | ◎ |
電源・空調工事 | × | ◎ | ◎ |
* 省力化は「システム構築費」内で総額の 1/3 程度に抑えると安全。
2‑2 制度概要と採択のカギ
補助金 | 上限/率 | 採択の決め手 | 公募スケジュール |
---|---|---|---|
IT導入補助金 | 350 万円・2/3(小規模4/5) | ITツール登録+活用支援メニュー | 4〜12 月に 4〜5 回 |
省力化投資補助金 | 1 億円・1/2(小規模2/3)※1,500 万円超は 1/3 | 省人化効果・賃上げ KPI | 第3回:7/1〜9/2 |
ものづくり補助金 | 3,000 万円・1/2(小規模2/3) | 付加価値+4%・波及効果 | 年 3 回(6・10・1 月) |
3. 費用シミュレーション ― 3つのシナリオ
シナリオ | 投資形態 | 補助金 | 補助対象額 | 補助率 | 補助金額 | 自己負担 |
---|---|---|---|---|---|---|
A | クラウド GPU 24 か月 | IT導入 (小規模4/5) | 9,120,000 | 4/5 | 3,500,000※ | 5,620,000 |
B | GPU サーバー購入 | 省力化 (1/2) | 20,522,000 | 1/2 | 10,261,000 | 10,261,000 |
C | GPU サーバー購入 | ものづくり (1/2) | 20,522,000 | 1/2 | 10,261,000 | 10,261,000 |
※ IT導入は 350 万円の上限に到達。
4. 採択率を高める申請テクニック
4‑1 IT導入補助金
- クラウド GPU を 「AI モデル推論 SaaS」 として IT ツール登録。
- 導入後 12 か月の 活用支援(プロンプト最適化研修など) を「役務費」に計上しツール ID に紐付ける。
- サーバー本体は対象外 なので見積から分離する。
4‑2 省力化投資補助金
- 〔人手削減時間 × 人件費〕÷ 投資額 ≤ 3 年 の省人化 ROI を算出。
- 電力量削減を kWh→電気料金→CO₂排出 まで示し「GX 評価」も上乗せ。
- 賃上げ計画(最低賃金+30 円)を表明すると上限 1/3→1/2 維持が可能。
4‑3 ものづくり補助金
- 付加価値 4%増・給与総額 1.5%増 を P/L・CF でリンク。
- GPU を活用した toB AI API 提供 など波及効果を図解。
- 同業採択事例(5 軸加工機+GPU)を引用し、審査員に具体像を想起させる。
5. FAQ ― 実務のハテナを解消
Q | A(簡潔ポイント) |
---|---|
IT導入で GPU 本体は絶対不可? | 2025 要領で PC・タブレット等のみ対象。サーバーは除外。クラウド GPU で代替。 |
省力化でクラウドだけ申請できる? | 原則ハード主体。クラウド費は総額の 1/3 以内に留めると安全。 |
サーバー電源工事費は補助対象? | 省力化・ものづくりは OK(機械装置関連費)。IT導入は対象外。 |
GPU を 2 台、段階増設したい | 省力化・ものづくりは増設可。増設分も ROI 計算に含めること。 |
DC(データセンター)大型補助との併用は? | 不可。DC 補助は別事業で重複対象となり申請排除。 |
6. まとめ
GPU サーバー(H100 1 枚)導入には約 2,052 万円が必要ですが、省力化投資補助金またはものづくり補助金なら 50 %=1,026 万円 を補助でカバーできます。ハード対象外の IT導入補助金 でもクラウド GPU 24 か月分を申請すれば上限 350 万円を確保可能。採択を左右するのは ROI・賃上げ・付加価値など数値根拠。経費をハード/クラウドに切り分け、制度ごとに最適化した申請書を作成することで GPU 投資のハードルを大幅に下げられます。
次にやるべきアクション
- 導入目的と ROI(省人化・付加価値) を整理
- GPU サーバー購入 vs クラウド 24 か月で 比較見積 を取得
- 補助金カレンダーに 省力化(7/1–9/2)/ものづくり(10 月予定) を登録
- IT導入の場合、クラウド GPU +活用支援メニュー を IT ツール登録
- 電源・空調工事を含む総額を確定し、資金繰り(立替 CF) を試算