
2025年6月30日に公表された第13回「事業再構築補助金」の採択率は35.5%。一方でコロナ禍ピーク時に比べ応募件数は激減し、競争環境は大きく変化しました。本記事では最新データをもとに“勝てる計画書”の条件を深掘りし、次回申請で合格率を高める具体策を示します。
読むメリット
- 第11~13回の採択率推移をグラフで直感把握
- 採択/不採択を分けた3大要因をプロ視点で解説
- 成功3社・失敗2社のリアルな申請ポイントを把握
- 次に狙うべき関連補助金3つと申請タイミングが分かる
第13回の採択結果を数字で読み解く
第11回~第13回の採択率推移
以下の表は直近3回の応募・採択実績です。
公募回 | 応募件数 | 採択件数 | 採択率 |
---|---|---|---|
第11回(2024/2公表) | 9,207 | 2,437 | 26.5% |
第12回(2024/11公表) | 7,664 | 2,031 | 26.5% |
第13回(2025/6公表) | 3,100 | 1,101 | 35.5% |
採択率上昇の背景
- 応募母数減
- コロナ回復加速化枠の終了が近づき、申請を控える事業者が増加。
- 審査重点のシフト
- GX・DX・賃上げ実績を定量評価する比重が高まり、「最低賃金類型」の採択率が36.8%と突出。
- 加点制度の浸透
- 事業者団体経由の申請や金融機関同席ヒアリングなど、加点策を採った計画が上位に集中。
採択を左右した3つの評価ポイント
1. 事業性 — 数値根拠で中長期の利益を証明
- 市場規模と競合優位性を第三者データ(総務省統計・業界レポート等)で裏付け。
- 3年後PL・CFを作成し、投資回収期間を示すと説得力が高まる。
2. 再構築要件 — 6類型の“1本勝負”が鉄則
- 新市場進出・事業転換等のうち該当する1類型に絞り、適合根拠を条文番号まで記載。
- 複数類型を混在させると審査側が「要件不明確」と判断しやすい。
3. 賃上げ — KPIと制度改定をセットで提示
- 地域別最低賃金+30円以上を年月日指定で宣言し、評価・昇給フローを図示。
- 人件費高騰リスクを資金繰りシミュレーションに反映し、金融面の実行可能性も示す。
成功事例と失敗事例から学ぶ
成功事例3選
企業概要 | 投資プラン | 勝因 |
---|---|---|
株式会社ナナクレマ(静岡・サービス) | 就活カフェ→AIジョブマッチングプラットフォーム新規立上げ | DXで顧客基盤を再活用し、営業利益率16%→26%へ向上見込み |
有限会社日新木型工業(静岡・製造) | 鋳物3D測定機導入→金型リバースエンジ事業へ転換 | GX・省資源化の社会課題と投資効果を両立 |
合同会社Salon Navigation(札幌・医療福祉) | 高齢者向けフィットネス新市場に参入 | 地域包括ケア計画との整合・自治体連携で加点獲得 |
失敗事例2選
企業概要 | 主な不足点 | 結果 |
---|---|---|
製造業A社(第12回、3回連続不採択) | SWOT分析甘く差別化弱い。原価削減効果未計算 | 「市場性・実現性低い」とコメント |
小売業B社(第11回) | 書類様式漏れ、再構築類型の誤認 | 形式不備で審査対象外 |
次に勝つための3つの補助金活用戦略
- 新事業進出補助金 2025(上限1.5億円・補助率1/2)
- 事業再構築に近い要件で、販路開拓費・デジタル投資も対象。公募開始は2025年9月予定。
- 省力化投資補助金〈スマート設備導入枠〉(上限7,500万円・補助率1/2)
- 省人化ロボット・AI検査装置などを導入する製造業に好適。2025年10月から随時受付。
- IT導入補助金 2025〈デジタル基盤類型〉(上限450万円・補助率3/4)
- ERP・CRMクラウドを対象に、「計画書簡略型」で採択率が高め。2025年8月公募開始見込み。
よくある質問(FAQ)
Q1. 金融機関との連名提出は必須ですか?
A. 認定経営革新等支援機関の確認書は必須ですが、金融機関との連名は任意です。ただし地方銀行が関与した計画の採択率は34.2%と平均を上回る傾向があるため、資金調達計画まで巻き込む方が有利です。
Q2. 賃上げ目標を達成できなかった場合のペナルティは?
A. 賃上げ要件未達は補助金の一部または全額返還が原則です。未達が予見できた時点で「事業計画変更届」を速やかに提出し、減額措置へ切替えることで戻入額を抑えられる可能性があります。
Q3. 3回連続で不採択でした。次回に向け最優先で直すべき点は?
A. 不採択コメントを抽出し、①再構築要件の適合可否、②市場性データの客観性、③賃上げKPIの妥当性──の順で再点検してください。特に「類型誤り」「売上根拠なし」は審査段階で即減点となります。
まとめ
第13回の採択率は35.5%へ上昇しましたが、実際には「最低賃金類型」など特定枠での高採択が平均値を押し上げた結果です。審査では(1)事業性の数値根拠、(2)再構築要件への単一類型適合、(3)賃上げKPIと制度改定の整合――が明暗を分けました。成功3社は社会課題と事業モデルをリンクさせ、失敗2社はいずれも要件誤認・データ不足が原因です。次回以降は「新事業進出補助金」「省力化投資補助金」「IT導入補助金」を組み合わせ、多様な資金調達の選択肢を持つことが重要です。
次にやるべきアクション
- 公募要領最新版を入手し、類型選定の適合チェックを行う
- 市場規模・競合分析を第三者統計データでアップデート
- 賃上げ計画を人事制度と連動させ、時期・率をKPIで確定
- 認定支援機関・金融機関と早期に面談し資金調達スキームを固める
- 代替補助金(新事業進出・省力化投資・IT導入)の公募開始日をカレンダー登録