
1. はじめに:2025年は「ものづくり補助金」で賃上げ+設備投資を加速
2025年は、中小企業を取り巻く経営環境が大きく変化するタイミングといわれています。インボイス制度の導入や、人件費・原材料費の上昇などへの対応が課題となる一方、DX(デジタルトランスフォーメーション)投資や海外展開を狙う事業者にとってはチャンスの年でもあります。
このような状況下で、「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」は、賃上げと生産性向上をセットで推進する中小企業向けの代表的な制度の一つです。毎回、公募締切ごとに30〜50%前後の採択率となっており、競争は厳しいものの、上手に申請して採択されれば数百万円〜数千万円規模で設備投資を補助してもらうことが可能です。
本記事では、2025年度(令和7年度)「ものづくり補助金」第20次公募の概要、具体的なスケジュールや応募要件の変更点、そして採択率を上げるための実務ポイントを初心者向けに解説します。「締切に間に合うか不安…」「何から準備すればいいの?」といった声に応えるため、チェックリスト形式でも重要事項をまとめました。製造業のみならず、小売・サービス業も含め、幅広い業種の経営者・個人事業主に向けた内容となっています。ぜひ、早めに情報収集を始め、事業計画書を着実に仕上げていきましょう。
2. ものづくり補助金の目的と対象範囲
2-1.「ものづくり補助金」の目的
「ものづくり補助金」(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業庁が実施する設備投資支援の一環であり、生産性向上と持続的な賃上げを促すための制度です。具体的には、以下のような取り組みを支援対象としています。
- 新製品・新サービスの開発(試作品製造・実証等)
- 海外展開(輸出向け商品の製造ライン整備など)
- DX(デジタル化)投資(IoTやAI活用による生産効率化)
- 業務プロセスの革新(製造プロセス自動化、リードタイム短縮など)
2-2.対象者と業種
- 中小企業・小規模事業者がメイン対象
- 製造業に限定されず、小売業・サービス業など、付加価値向上を狙う事業であれば広く応募可能
- 法人だけでなく個人事業主も要件を満たせばOK
- 創業間もない企業でも応募は可能だが、計画書で売上・利益・賃上げの見通しを示す必要あり
2-3.賃上げ要件
- 「ものづくり補助金」で補助金交付を受ける事業者は、事業期間中および事業終了後に給与支給総額を一定比率で引き上げる計画を策定し、実行することが求められます。
- 2025年度からは年率2%以上など、従来よりも高い賃上げ率が基準となることに注意。
3. 第20次公募の基本スケジュール
2025年度(令和7年度)の「ものづくり補助金」第20次公募は、以下のような流れで進みます。公募開始〜交付決定〜事業完了までの一連のステップを把握しておきましょう。
3-1.公募開始・申請締切
- 公募開始:2025年4月25日(金)
- 電子申請受付開始(Jグランツ):2025年7月1日(火)17:00
- 申請締切:2025年7月25日(金)17:00必着
上記の日程はあくまで目安で、公式サイトや事務局からの追加発表があれば変動する可能性もあります。締切時間を過ぎるとシステムからの申請は一切受け付けられないため、余裕を持って提出してください。
3-2.採択結果発表~交付決定
- 採択結果公表:2025年10月下旬頃
- 採択候補者リストが公式サイトに掲載される
- 採択された企業には別途メールやシステム上でも通知
- 交付申請~交付決定:採択後、2か月以内程度で交付申請手続きを行う
- 交付申請書の審査を経て、約1か月後に事務局が交付決定通知を発行
3-3.事業実施期間~実績報告
- 交付決定日から最長10か月間(グローバル枠は最長12か月間)が事業期間
- ここで機械設備の発注・納品・検収・支払いなどを完了させる
- 事業完了後、30日以内に実績報告書を提出
- 問題なければ補助金の額が確定し、補助金受領となる
事前着手は基本的に認められず、交付決定前に購入した設備費用は補助対象外になるため注意しましょう。総じて、採択結果発表から補助金受領まで1年近くかかる場合もあります。
4. 申請に必要な期間と主な準備事項
4-1.事業計画書作成の目安は「70時間」?
ものづくり補助金の申請にあたっては、事業計画書が最も重要な書類となります。単に「新しい機械を入れたい」という程度ではなく、具体的な生産性向上策や収益見込み、賃上げ計画を盛り込む必要があります。
一般的に、採択レベルの計画書を作り込むには合計70時間程度の作業が必要とのデータもあります。特に初めての申請の場合、社内の関係者で打ち合わせを重ねたり、専門家(認定支援機関・中小企業診断士・金融機関など)に相談する時間を考慮すると、1〜2か月ほど前倒しで準備を始めるのが理想です。
4-2.GビズIDプライムの取得
- GビズIDとは、政府系オンラインサービス(Jグランツなど)にログインするためのアカウント
- GビズIDプライム(最上位権限)は取得に数週間かかる
- 法人登記簿謄本や印鑑証明の提出なども必要になるため、余裕を持って手続きを行う
4-3.認定支援機関との連携
- 認定支援機関(金融機関、商工会・士業など)との連携は任意
- ただし、専門家に相談することで書類の不備防止や計画書の質向上が期待できる
- 自社内に余裕がない場合、早めに支援機関へ相談したい
4-4.見積取得・設備仕様の確定
- 補助対象経費として計上する設備・システムの正式見積書が必要
- 同じ設備でも複数社比較(相見積)を求められる場合あり
- 設備の型番や仕様が計画書と整合性を持つよう注意
5. 公募締切までの準備チェックリスト
以下は、締切(2025年7月25日)から逆算して、90日前・60日前・30日前の各タイミングで準備しておきたい項目のまとめです。あくまで目安ですが、スケジュール管理の参考にしてください。
時期(締切から) | 主な準備項目 |
---|---|
90日前 (約3ヶ月前) | ・公募要領の精読と要件確認 ・GビズIDプライム取得開始 ・認定支援機関への事前相談 ・事業の大枠や賃上げ方針の決定 ・大企業相当(従業員101人以上)の場合は「一般事業主行動計画」策定に着手 |
60日前 (約2ヶ月前) | ・事業計画書のドラフト作成 ・設備の見積取得(ベンダーとの交渉) ・社内関係者や専門家と計画書をブラッシュアップ ・添付書類(決算書、登記簿謄本など)の準備 ・「両立支援のひろば」への行動計画公表(該当企業のみ) |
30日前 (約1ヶ月前) | ・事業計画書の最終版を完成 ・見積書との整合性チェック ・Jグランツ(電子申請システム)ログインテスト ・申請書類一式の誤字脱字・不備チェック ・締切直前の混雑回避のため、最終提出は1週間前までに完了を目指す |
6. 2025年度の変更点・注目ポイント
2025年度・第20次公募はこれまでの公募に比べ、いくつか重要な変更点が見られます。下記を押さえておきましょう。
6-1.申請類型が2枠に統合
- 従来のDX枠・GX枠・サプライチェーン強靭化枠などが整理され、「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」の2本立てに
- 国内市場向けの付加価値向上投資か、海外展開を含むグローバル投資かで区分されるため、応募時に自社の計画がどちらに該当するかを判断
6-2.補助上限額・補助率の引き上げ
- 従業員規模に応じた上限額が以前よりアップ
- 例:製品・サービス高付加価値化枠で従業員51人以上の場合は上限2,500万円
- グローバル枠は一律上限3,000万円
- 賃上げ幅が大きい企業にはさらに上限を引き上げる特例あり
6-3.賃上げ要件が強化(年率2%以上)
- 従来は年率1.5%以上などだった給与支給総額の増加率が2%以上に引き上げ
- 都道府県別賃金上昇率より高い場合は、その高い方を適用
- 計画達成できないと補助金が不交付になるリスクもあるため注意
6-4.一般事業主行動計画の策定(従業員101人以上企業)
- 常時使用する労働者が101人以上の企業は、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の策定・公表が必須
- 厚労省の「両立支援のひろば」への掲載に1〜2週間かかる
- 対象規模の企業は申請前に必ず手続きを進める
6-5.収益納付制度の撤廃
- これまで、補助事業による収益が生じた場合、国庫へ返納する「収益納付」が存在した
- 第20次公募以降は収益納付を求めない方針
- 設備投資で利益が出ても返納不要となり、投資判断がしやすくなる
6-6.採択率は依然厳しい
- 応募件数が増加しており、採択率は30~50%前後で推移
- 競争率が高い分、事業計画書の質が合否を左右する
- 加点策(パートナーシップ構築宣言、事業継続力強化計画など)を検討すると有利
7. 申請実務上の注意点(書類作成・支援機関相談・事前着手制限など)
7-1.事業計画書はロジックと整合性がカギ
- 審査は書面のみで行われ、ヒアリングは原則なし
- 「現状の課題」「新たな設備投資」「生産性向上の具体策」を筋道立てて説明
- 付加価値額や給与総額の伸び率を数値根拠つきで示す
- 添付見積書や財務諸表との整合性を徹底確認
7-2.専門家・認定支援機関の活用
- ものづくり補助金では認定支援機関のサポートは任意だが、採択される計画書は往々にして専門家のレビューが入っている
- 中小企業診断士、会計士、商工会議所、金融機関などへの相談で不備を防止
- 早めに依頼しないとスケジュール上対応不可になる恐れあり
7-3.電子申請のみ対応(締切直前は要注意)
- gBizIDプライム取得が時間を要する
- Jグランツに初めてログインする際は操作に慣れる必要がある
- 締切日にアクセス集中し、送信エラーになるリスクも高い
- 余裕をもって最低でも3〜7日前までに提出を終えるのが望ましい
7-4.交付決定前の事前着手はNG
- 交付決定(採択発表とは別)前に発注・契約・支出したものは補助対象外
- どうしても早く導入したい場合は、自己資金全額で賄う覚悟が必要
- 誤って発注済みにすると不採択や補助金返還につながる危険あり
8. まとめ
2025年度「ものづくり補助金」の第20次公募は、公募開始が4月下旬、締切が7月下旬というスケジュールで進行し、採択発表は秋頃が予定されています。そこから交付決定・事業実施・実績報告と続くため、補助金受領まで最長で1年近くかかる点も理解しておきましょう。
- 大幅な賃上げ要件が設定され、投資後に給与支給総額を2%以上(平均)引き上げる必要がある
- 新たに従業員101人以上の企業には「一般事業主行動計画」策定・公表が必須となるなど要件が増加
- それでも上限額や補助率が引き上げられ、最高2,500万〜3,000万円程度の補助を狙える魅力もアップ
競争倍率は高いですが、計画性のある事前準備と論理的で根拠ある事業計画書を作成すれば、採択に近づくことができます。GビズIDの取得や見積書の準備、専門家相談などを怠らず、締切日の1〜2か月前からしっかり取り組むのが成功のカギです。適切な投資計画で「ものづくり補助金」を活用し、賃上げと生産性向上を実現していきましょう。
9. 当サイト(HOJOLAB)の運営者情報・参考資料
当サイト(HOJOLAB)について
当サイトは、補助金や助成金を含む公的支援策の最新情報を収集し、中小企業・個人事業主のビジネス加速をサポートするメディアです。ものづくり補助金だけでなく、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金など、複数の制度を組み合わせた資金調達・経営戦略もご提案しています。2025年は大きな制度改編の年ですので、今後も最新動向を追い、皆さまの事業成功に役立つ情報を発信してまいります。
参考資料・公式情報
- 中小企業庁「ものづくり補助金 総合サイト」
- 公募要領(第20次公募版)
- gBizIDポータルサイト
- 厚生労働省「両立支援のひろば」
- 経済産業省・中小企業庁 各種ガイドライン

本記事を参考に、2025年の「ものづくり補助金」第20次公募への挑戦をぜひご検討ください。締切までに十分な時間があるように見えても、計画書の作り込みや手続きには数ヶ月単位の準備が必要です。早めに動き出し、計画を練り上げることで、賃上げ・生産性向上を実現する設備投資を実行し、事業の大きな飛躍につなげていきましょう。次の採択事例の主人公は、あなたのビジネスかもしれません。ぜひ積極的に活用をご検討ください。