2025年7月25日(20次締切)までに申請すれば、最大2,500万円(特例で4,000万円超)もの大規模投資が補助される可能性を秘めた「ものづくり補助金」。一方、過去の採択率は30〜40%前後と油断できず、事業計画書をいかに戦略的に組み立てるかがカギとなります。本記事では、初心者が押さえておきたい制度概要から、採択率を上げるための実践戦略までを網羅的に解説します。具体的な数値目標の示し方や審査員に伝わる書き方のコツを取り入れれば、補助金を活用して設備投資・新製品開発を加速させる道が開けるはずです。ぜひ参考にしてみてください。
この記事のポイント
- ものづくり補助金2025の対象・補助率・スケジュールを整理
- 採択率を高める3つの実践戦略を具体的に紹介
- 審査基準と加点・減点項目の理解が合否を分ける
- 申請書作成のテクニックと初心者向けテンプレート例
- 2025年中に目指す設備投資や賃上げ計画に弾みをつける

1.2025年ものづくり補助金の制度概要
1-1.対象となる事業者と補助内容の基本
ものづくり補助金(正式名称:「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」) は、中小企業・小規模事業者(個人事業主含む)や一部の中堅企業が、生産性向上につながる設備投資を行う場合に補助を受けられる制度です。製造業であれば資本金3億円以下か従業員300人以下など、業種別の中小企業要件を満たしていれば申請可能。ただし、大企業は対象外となり、過去3年以内に本補助金を2回受けた企業は申請できません。
主な補助対象は、新製品・新サービスの開発や生産プロセスの革新に必要な機械装置購入費、ソフトウェア費、外注費、技術導入費、専門家謝金など。単なる設備の更新や増産だけでは採択が難しく、革新的な取り組みが求められる点が特徴です。
1-2.補助率・補助金額・スケジュール
(1) 申請枠の種類と上限額
2025年公募では、申請類型が整理されて「付加価値枠」と「グローバル枠」に大別されました。
- 付加価値枠(製品・サービス高付加価値化枠)
- 従業員数に応じた上限:5人以下: 750万円、6~20人: 1,000万円、21~50人: 1,500万円、51人以上: 2,500万円
- 新規性・革新性のある国内投資が対象。3~5年で付加価値額年3%以上増などの要件あり。
- グローバル枠
- 一律3,000万円上限(従業員規模で変動なし)
- 海外展開や輸出を伴う事業が対象。海外渡航費・通訳費など海外特有の経費も認められる。
(2) 補助率と特例
- 原則:中小企業は1/2、小規模事業者は2/3。
- 賃上げ特例:給与総額年6%以上増等で上限加算(最大+1,000万円)や補助率UPなど。達成できないと返還リスクもあるため要注意。
(3) 公募スケジュール
- 第19回締切:令和7年4月25日(2025年)予定
- 第20回締切:令和7年7月25日(2025年)予定
各締切まで2~3か月程度の公募期間が設定され、電子申請(jGrants)で応募します。過去実績では採択率は約30~40%前後。決して容易ではないものの、事前準備をしっかり行えば採択は十分可能です。
1-3.申請に必要な書類と準備期間
ものづくり補助金は紙申請不可で、GビズIDプライムを取得した上で電子申請(jGrants) します。主な提出書類は以下の通り
書類名 | 概要・注意点 |
---|---|
事業計画書 | 核心となる計画書。具体的な取組内容・市場分析・数値目標などを10ページ程度でまとめる |
補助経費誓約書(様式1) | 対象経費を適正に使用、他補助金と重複しないこと等を誓約 |
賃金引上げ計画誓約書(様式2) | 事業期間内に最低賃金+30円や給与総額年平均1.5%以上増などを誓う |
決算書類(直近2期分) | 法人は貸借対照表・損益計算書・製造原価報告書など、個人事業主は確定申告書 等 |
従業員数を示す書類 | 法人事業概況説明書や所得税青色申告決算書(従業員数記載)など |
追加書類(必要に応じ) | グローバル枠の場合は海外展開準備資料、大幅賃上げ特例なら詳細計画書等 |
事業計画書の作成には2~3週間以上かかることが多く、GビズID取得はさらに数週間かかるため、合計1か月以上余裕を持つことを推奨します。

2.審査基準と評価のポイント
ものづくり補助金の審査では、「技術面」「事業化面」「経営面」「政策面」など多角的視点で書面評価が行われます。
- 技術面(革新性):提案の新規性・独自性
- 事業化面(市場性・収益性):ターゲット市場の分析や収益見通し
- 経営面(実現可能性・会社の戦略):資金計画や組織体制、長期ビジョンとの整合性
- 政策面(社会的意義・波及効果):DX推進や地域活性化、カーボンニュートラル等への寄与
加点項目としては、経営革新計画・DX認定・事業継続力強化計画認定など様々存在。該当すれば申請書に明記し、総合得点を底上げしましょう。逆に過去3年以内にものづくり補助金を1回受給している場合は減点となり、2回受給は申請不可となります。
3.採択率を高める3つの戦略
3-1.戦略1:採択された申請書に共通するポイントを押さえる
- 明確な数値目標(KPI)の提示
- 売上高○%UP、付加価値額○円増、投資回収○年 など定量的に示す
- 市場ニーズ・競合優位性を具体的に分析
- 客観データや図表を用い、自社の独自強みを明確化
- 経営戦略との整合性
- 本事業が長期ビジョンや中期計画とどうリンクしているか
- 投資対効果の高さ
- 導入費用に対しどれだけ売上・利益が増えるか
- 加点項目の確実な活用
- 事業継続力強化計画やパートナーシップ構築宣言など、取得しやすい加点を確保
3-2.戦略2:魅力的な事業コンセプトの作り方
- 顧客起点のコンセプト
- 「顧客の課題を解決する新製品・サービス」を軸に考える
- 政策テーマとの紐付け
- 「DX」「カーボンニュートラル」「地方創生」など国の重点分野を意識
- 独自性×実現性のバランス
- あまりに突飛な計画はリスク大、コア技術に基づく新分野進出が◎
- ストーリー性
- 現状→課題→本事業による解決→将来効果、という筋立てで分かりやすく
- 事例研究と差別化
- 過去の採択事例を参考にしつつ、自社独自の強みや応用を加えてアピール
3-3.戦略3:不採択を避ける申請書記述テクニック
- 定量的エビデンスの提示
- 「年間○万円のコスト削減」「作業工数○%短縮」など具体的数字
- 社会的波及効果の記述
- 地域経済や環境への好影響、雇用創出を示す
- 疑問点を先回りで対策
- 資金繰り、技術面の不安は補足資料や専門家連携を説明
- 読みやすいレイアウト・表現
- 箇条書き・表・図を活用し、専門用語には簡単な説明を添える
- 単なる設備更新ではなく革新を強調
- 「新たな付加価値を創造する投資」であることを明確化
- 第三者チェック
- 支援機関や同業知人に読んでもらい、論理矛盾や情報不足を修正
4.初めての申請書:構成要素とテンプレート例
4-1.主な構成項目(参考)
- 事業概要・目的
- 「何を実現するか」を端的にまとめる。新製品なら名称や特徴も記載
- 背景(現状の課題)
- 自社や市場の課題を提示し、補助事業の必要性を説明
- 具体的な取組内容
- 導入設備やソフトのスペック、スケジュールなどを詳細に
- 市場ニーズ・競合優位性
- 市場規模、ターゲット顧客、競合との差別化を定量的に示す
- 事業実施体制・スケジュール
- 社内体制・外部連携先、着手から稼働開始までの工程表
- 将来の展望(事業化計画)
- 売上予測、収益計画、拡張戦略を数値とともに
- 数値計画(付加価値額・賃金見込み)
- 3~5年後の付加価値額や最低賃金の上昇計画
- 政策面・波及効果
- 地域経済活性化やDX推進など、社会的意義や加点項目をアピール
4-2.記載時の注意点
- 簡潔で具体的に:冗長な表現は避け、数字や根拠を明示
- 一貫性:市場規模と売上目標が整合するか、工程に無理はないかチェック
- 図表の活用:設備の写真や市場データのグラフなど、視覚的に理解しやすく
- 公式参考様式の活用:事務局提供の雛形をベースに作成すると抜け漏れを防げる
5.まとめ:採択への近道は「審査ポイントの網羅」と「戦略的申請書」
ものづくり補助金は、中小企業が新製品・新サービス開発や生産プロセス革新に挑戦するのを後押しする頼もしい制度です。しかしながら、過去の採択率が30〜40%程度という事実が示すように、決して楽に通る補助金ではありません。鍵となるのは、審査項目にしっかり対応し、計画の説得力を高めること。そのためには以下の点が重要です。
- 制度や審査基準を正しく把握し、対象要件・加点項目・減点項目を理解する
- 革新的かつ実現可能性の高い事業コンセプトを設定し、数字や調査データで根拠を補強する
- 投資対効果(ROI)や会社全体の成長戦略とのリンクを明確に示し、説得力を高める
- 加点要素(DX、賃上げ、経営革新計画など)を積極的に取り入れ、減点をカバー
- 第三者のアドバイスや支援機関のセミナーを活用し、申請書をブラッシュアップ
特に初心者の場合、計画書の完成度を上げるには早めに準備を始め、余裕をもって書類を作り込むことが大切です。GビズIDの取得や見積書の取り寄せ、加点要素の事前承認など、締切直前には間に合わない手続きもあるため、最低1か月以上のリードタイムを確保するのがおすすめです。
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2025年のものづくり補助金は、枠組みや要件が一部刷新されているため、最新情報のチェックを怠らないようにしましょう。しっかりとした事業計画と戦略的な申請書を用意すれば、革新的設備投資の実現、そして売上増・競争力強化につながる大きな一歩を踏み出せるはずです。皆様のチャレンジが成功し、中小企業のさらなる飛躍につながることを心より願っています。