2025年のものづくり補助金(正式名称:「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」)は、中小企業の生産性向上や新製品開発に大きく貢献してくれる心強い制度です。しかし採択率は公募回によって30%台~50%前後と決して高くなく、半数以上の企業が不採択になる公募回も少なくありません。
実際に不採択になった場合、その理由をしっかり分析し次回以降に改善しないまま再申請しても、同じ失敗を繰り返してしまう恐れがあります。そこで本記事では、ものづくり補助金における不採択理由トップ10を抽出し、それぞれの改善策(再チャレンジのポイント)を詳しく解説します。
初心者の方にも理解しやすいように専門用語は適宜補足しつつ、具体的な数字や事例をまじえて整理しました。申請期限や要件を踏まえたうえで、自社はどこが弱点だったのかを振り返りながら一つひとつ対策を実行すれば、次回公募で採択に近づくはずです。ぜひ参考にしてみてください。
本記事のポイント
- 不採択理由トップ10を具体例つきで解説
- それぞれの原因に対する実践的な改善策を提示
- 2025年のものづくり補助金申請を再チャレンジする方に最適
- 公募要領を読み解き、審査観点を満たすコツが身につく
- 計画書のブラッシュアップ手順や加点項目対策も網羅

不採択理由1:公募要領の理解不足・書類不備
理由の概要
公募要領を十分に読まずに準備した結果、要件不備や提出書類の不備などで審査以前に落とされるケースです。ものづくり補助金には細かな要件や提出形式が定められており、ちょっとした見落としが不採択(失格)につながります。
根拠・具体例
- 補助率の誤記載(本来2/3なのに1/2で計算している等)
- 対象外経費の計上(要件外の経費を申請に含める)
- 付加価値額増加要件の未達(年率3%増を満たしていない)
- 決算書類の抜けや古いものを提出
- 従業員数証明や法人登記簿の期限切れ
どんなに事業内容が良くても形式不備で失格となり得ます。
再チャレンジの改善策
- 公募要領を初めから最後まで熟読し、要件に対応するチェックリストを作る
- 最新の様式をダウンロードし、必須項目を一つずつ確認
- 第三者(専門家や支援機関)の書類チェックを受ける
- 数値要件(付加価値額など)は計算し直して基準クリアを確認
不採択理由2:事業計画の具体性不足
理由の概要
計画書が抽象論ばかりで、数字や根拠データが足りない場合に評価が低くなります。審査員は「実現可能性」を見るため、売上・利益予測や市場データが書かれていない計画は説得力に欠けます。
根拠・具体例
- 「大幅に生産性向上」としか書いていない → 具体的に何%向上なのか不明
- 「マーケットが拡大」とだけ書き、市場規模や成長率のデータが無い
- 「高品質な製品」と自賛するが、実測値や比較指標がゼロ
こうした内容は審査員に「絵空事」と受け取られがちです。
再チャレンジの改善策
- 定量的なKPIを設定(売上◯%増、作業効率◯%削減)
- 外部データ(市場統計、顧客アンケート)を引用して裏付け
- 具体的な競合分析や導入後の成果シミュレーションを示す
- 固有名詞(特許名、技術名称など)や写真・図解を加えて視覚化
不採択理由3:投資計画の過大・過小など適切性不足
理由の概要
企業規模に対して無理のある大規模投資や、逆に効果の小さすぎる投資は評価されにくいです。適切な投資規模の判断が甘いと、審査で「実行困難」「費用対効果が低い」とみなされる恐れがあります。
根拠・具体例
- 年商2,000万円の企業が2,000万円の設備投資 → 過大投資
- 最低ラインぎりぎりの100万円程度の投資 → 効果が薄いと判断
- 債務超過・連続赤字で資金調達が難しそう → 実行性に疑問
再チャレンジの改善策
- 自社の財務力と照らし合わせた無理のない投資額設定
- 段階投資や規模縮小して実現性を高める
- 金融機関との融資内諾など資金繰り確保を明示
- 投資額に対する成果見込みをしっかり示し、費用対効果をアピール
不採択理由4:費用対効果・収益計画の不備
理由の概要
補助事業により十分な収益が見込めない計画や、付加価値増加が乏しい計画は不採択要因となります。投資額を上回るリターンがないと「税金投入に値しない」と判断されがちです。
根拠・具体例
- 1,000万円の投資で年50万円しか増益が見込めない → 20年かかる回収
- 付加価値額増加率が1%程度でしかない → 要件上の年3%増を満たさない
- 収益計画に誤計算が多く、実現性が疑われる
再チャレンジの改善策
- 投資回収シミュレーションを提示し、◯年で回収可能と示す
- 売上増やコスト削減効果を具体的に積算(数量×単価など)
- 付加価値額増加を目標値以上に設定し、根拠データで裏付け
- 専門家に収益計画をチェックしてもらい、数字の整合性を確保
不採択理由5:市場ニーズ・顧客ニーズの不明確さ
理由の概要
「誰がその製品を必要としているのか」が示されていないと、事業の必要性が伝わらず不採択になりがちです。市場や顧客の声を調査していない計画は根拠が薄いと評価されます。
根拠・具体例
- ターゲット顧客が曖昧、「幅広い層」にアピール → 不明瞭
- 市場規模や成長率の記載なし → 実際の需要が疑問視
- 顧客インタビューやアンケート結果ゼロ → 当社の思い込み?と見られる
再チャレンジの改善策
- 市場調査や顧客ヒアリングを実施し、結果を計画書に反映
- 具体的ペルソナ設定や競合との比較で顧客メリットを明確化
- 「◯企業から引き合いがある」「アンケートで◯割が導入希望」など、エビデンスを盛り込む
- 国や自治体の統計データを引用し、マクロ動向+ミクロ需要を組み合わせて説得力を高める
不採択理由6:審査項目(技術面・事業化面・政策面)の記載漏れ
理由の概要
公募要領には「技術面」「事業化面」「政策面」といった審査軸が明示されています。計画書でこれら全てに対応していないと、大きく減点されてしまいます。
根拠・具体例
- 技術面:革新性・優位性の説明不足
- 事業化面:収益モデルや実施スケジュールが曖昧
- 政策面:地域経済や国の施策(DX・カーボンニュートラル等)との関連記載なし
再チャレンジの改善策
- 公募要領の審査項目を章立てにし、それぞれに対応する記載を用意
- 技術面:新規性や比較データで具体化
- 事業化面:市場分析・スケジュール・組織体制・収支予測
- 政策面:地域や社会へ波及効果、国の重点分野とのリンクを強調
不採択理由7:事業計画の実現可能性(実行可能性)が低い
理由の概要
計画が非現実的またはリソース不足で実行困難とみなされる場合です。売上目標が過大、スケジュールが非現実的、人員・資金が足りないなどが典型。
根拠・具体例
- 3年で売上10倍など、誰が見ても大きすぎる目標
- 社員2名の企業で大規模開発を同時進行 → 人的リソース不足
- スケジュールに無理があり、開発→量産→販売までわずか数ヶ月しか設定なし
再チャレンジの改善策
- KPIやスケジュールを妥当に再設定(3~5年で無理のない達成範囲)
- 人員計画を強化(採用や外部パートナー連携など)
- 資金繰り・融資面の裏付けを確保
- リスク対応策(技術・納期・資金)を明記し、計画の実行性を高める
不採択理由8:自社の独自性・革新性アピール不足
理由の概要
差別化ポイントや強みが曖昧な計画は、同業他社と比べて埋もれがちです。ものづくり補助金は相対評価のため、「この会社である必然性」が伝わらないと不採択になりやすいです。
根拠・具体例
- 「高品質」としか書かず、独自技術や実績が示されていない
- 受賞歴や特許保有など強みがあるのにPRしていない
- アピールしていることが事業計画に直結していない(単なる経歴自慢)
再チャレンジの改善策
- 自社が持つ特許やノウハウ、過去事例を具体的に記述
- 他社では真似できない独自性をピンポイントで強調
- 第三者評価や客観的データ(顧客満足度、表彰履歴)を積極的に掲載
- 「当社だからこそ可能」な優位性を計画全体に絡める
不採択理由9:政策的な優先事項(DX・脱炭素など)への対応不足
理由の概要
近年の補助金はDX(デジタル化)や脱炭素など政策的重点分野への対応が重視されます。そこを無視したアナログ計画や環境配慮ゼロの計画は政策面での評価が伸び悩み、不採択になる可能性があります。
根拠・具体例
- IoT・AIと無縁の従来型設備更新のみ → 「革新性に欠ける」と見なされる
- 省エネ・CO2削減効果の言及が全くない
- 国のDX方針とのリンクが希薄
再チャレンジの改善策
- デジタル技術(IoT、AI、クラウド)の導入要素を計画に組み込む
- 脱炭素や省エネに寄与するなら具体的削減量を示す
- 国の政策目標(DX推進、地方創生など)との関連付けを明記
- 公募要領のグリーン枠・DX枠等があるなら検討し、関連項目を積極的にアピール
不採択理由10:加点項目の未取得による評価点不足
理由の概要
ものづくり補助金では加点項目(賃上げ加点、経営革新計画認定、パートナーシップ構築宣言等)を取るほど採択率が大幅に上がります。これらを取得せず申請した場合、相対評価で不利になり不採択に繋がるケースが多いです。
根拠・具体例
- 賃上げ加点を避けてしまい、他社との差がつく
- 経営革新計画や事業継続力強化計画など認定制度を活用していない
- パートナーシップ構築宣言等、取得が容易な加点すら取りこぼし
再チャレンジの改善策
- 公募要領の加点項目一覧を確認し、取得可能な項目をすべて取りに行く
- 賃上げ加点は実行可能な範囲で設定し、確実に加点を狙う
- 「経営革新計画」などは認定に時間がかかるため早めに申請
- 取得した加点項目は計画書で明示し、根拠資料を添付
まとめ
ものづくり補助金で不採択となる主な理由トップ10を取り上げ、再チャレンジで乗り越えるための具体策を解説しました。改めてまとめると、以下のポイントを押さえることで申請書の完成度が格段に向上し、次回採択を大きく引き寄せられます。
- 公募要領を熟読し、書類不備ゼロを目指す
- 具体的数値データや市場分析を盛り込み、説得力を高める
- 自社規模・財務状況に合った適切な投資規模と無理のない計画
- 費用対効果を示し、収益予測を現実的かつ魅力的に描く
- 市場ニーズ・顧客要望を把握し、的確に応える計画をアピール
- 審査項目(技術面・事業化面・政策面)に漏れなく対応する
- リソース・スケジュールをリアルに設定し実現可能性を示す
- 自社の独自性・強みを具体的にPRし、差別化を図る
- DX・脱炭素など国の政策テーマも織り込む
- 加点項目は取得し得るものは全部取得して得点アップ
不採択であっても原因を正しく分析し対策を打てば、次の公募で採択ラインを突破できる可能性は十分にあります。申請期限(多くの場合、締切当日17:00)はあっという間にやってきますので、早めの行動と入念な準備が肝心です。公募要領の改訂や追加公募枠にも常にアンテナを張り、最新情報をキャッチしましょう。
当サイト(HOJOLAB)は、補助金・助成金関連の専門家や行政書士が集結するメディアです。公募要領の解読から申請書ブラッシュアップのコツ、採択事例分析まで、総合的にサポートしています。ものづくり補助金のみならず、他の補助金や支援制度との併用や比較検討も随時ご案内可能です。
不採択のリベンジを果たすため、この記事を参考に計画書を再構築し、次回公募での採択を勝ち取りましょう。自社の新製品開発や生産性革命を実現し、日本のものづくりをさらに盛り上げていく第一歩となることを願っています。