
「業務改善助成金ではPCは対象外」「省力化投資補助金は大型ロボット専用」――そんな誤解が原因で、せっかくの支援策を見逃している中小企業が少なくありません。実は2025年度ルールでは 特定条件下でPC購入費を計上できる うえ、第3回公募(8月下旬締切)に向けた準備も今が最適期です。本記事を読めば
- PC費用が認められる条件を制度別に即判定
- 省力化投資補助金〈第3回〉のタイムラインを一覧で確認
- “賃上げ宣言書”と見積書の書き方を具体例で理解
- 助成金と補助金を併用しながら最低賃金アップを達成
できるため、限られた予算と時間で最大の投資効果を引き出せます。
第1章 なぜ「PC購入費=対象外」と思われているのか
PCは業務全般に使える汎用機器であるため、国の補助金・助成金では “専用性の低さ” を理由に対象外とされることが多いのが実情です。しかし2024年度以降、物価高騰や人手不足への対抗策として 「付加価値向上+賃上げ」を条件に、汎用PCも例外的に認める仕組み が整備されました。まずは制度別の基本ルールを把握しましょう。
1‑1 PC費用の可否を一目でチェック
制度名 | 汎用PC購入 | 中古PC | リース契約 | 備考 |
---|---|---|---|---|
業務改善助成金 | △ ※特例事業者のみ可 | × | △(リース料のうちハード代相当額は不可) | POS一体・タブレット型も条件付き可 |
省力化投資補助金 | ×(原則)○ IoT設備と一体導入の場合 | × | ○ ファイナンスリースのみ | PC単体は対象外 |
小規模事業者持続化補助金 | ○ ただし上限50万円枠 | △(中古は原則×) | ○ | 本稿では詳細割愛 |
「△」=条件付きで可。詳細は各章参照。
第2章 業務改善助成金でPCを計上する条件
2‑1 制度概要と最新改正ポイント
業務改善助成金は、中小企業が 事業場内最低賃金を30円以上引き上げる ことを前提に、生産性向上設備の導入費用を支援する厚生労働省の助成金です。2025年度は以下3点が改正され、PC購入の可能性が広がりました。
- 物価高騰等要件の特例事業者 に限り汎用PC・タブレットを補助対象に追加
- 上限助成率を 3/4(従業員30人未満) に引き上げ
- 申請から支給決定までの平均処理期間を 2か月以内 に短縮
2‑2 PC費用が認められる4チェックポイント
- 売上総利益率または営業利益率が直近2年平均で▲15%以上
- PCが 生産性向上に直接寄与(例:クラウド在庫管理・DXダッシュボード端末)
- 見積書でスペック・台数・単価 を明示し、汎用利用でない旨を備考記載
- 購入後 6か月以内 に賃上げ実施 → 経費精算
該当しない場合は、POSレジ一体型PCなど 専用品 として申請する手もあります。
2‑3 必要書類と作成のコツ
- 交付申請書(様式第1号):PC購入目的に「生産性指標12%改善」「月次処理時間▲120時間」など数値目標を記入
- 見積書:後述のサンプル例参照
- 賃金台帳・就業規則:賃上げ幅を赤字で差し替え
- 認定経営革新等支援機関の確認書:改善効果の第三者証明
第3章 省力化投資補助金〈第3回〉でPC費用を確保する戦略
3‑1 公募スケジュール(2025年度第3回)
フェーズ | 日程 | 主要タスク |
---|---|---|
公募要領公開 | 2025‑06‑27 | 様式DL・要件確認 |
申請受付開始 | 2025‑08‑05(予定) | jGrants入力開始 |
申請締切 | 2025‑08‑28 17:00 | 電子申請完了 |
採択発表 | 2025‑11‑22 | メール通知・HP掲載 |
交付申請 | 採択後すぐ | 見積・賃上げ宣言書提出 |
事業実施期限 | 交付決定から18か月 | 実績報告 |
3‑2 PC費用を盛り込む3ステップ
- IoT・ロボット設備とセット見積
- 例:自動梱包装置(主装置)+制御用PC(従装置)
- 「導入効果説明書」 にPCがなければ稼働しない旨を記載
- 見積内訳 に「制御用ハードウェア」と明記し、相殺単価を適切に配分
3‑3 リース契約を選ぶ場合
- ファイナンスリースのみ対象
- リース料軽減計算書 を添付(補助相当額=頭金扱い)
- リース期間は 耐用年数以上 が原則
第4章 “賃上げ宣言書”作成ガイドと見積書サンプル
4‑1 賃上げ宣言書5つの必須記載事項
- 目標値:給与支給総額+2.0%/年以上
- 対象期間:交付決定日~3年後の決算期末
- 周知方法:社内掲示板・社内SNS・回覧いずれかを明示
- 署名欄:代表者氏名/宣言日付/従業員代表署名
- 添付資料:直近期賃金台帳(写し)
4‑2 見積書サンプルとチェックポイント
項目 | 内容 | 留意点 |
---|---|---|
機器本体 | ノートPC×5台 | 型番・CPU・RAM・SSD容量を明記 |
周辺機器 | 27インチモニター×5 | 汎用品は省力化補助の対象外に注意 |
ソフト・設定費 | クラウド在庫連携設定 | 専門家外注費として区分 |
送料・設置 | 一式 | 内訳を別行計上すると精査がスムーズ |
消費税 | 10% | 補助対象外。税抜価格で試算 |
第5章 制度併用の実践テクニックとFAQ
5‑1 併用設計のコツ
- 同一経費の重複禁止 を厳守し、経費を役割分担
- 例:業務改善助成金→PC本体/省力化投資補助金→自動搬送ロボット
- 賃上げ計画を一本化 し、両制度で整合性を確保
- 支払時期 を調整し、キャッシュフロー悪化を回避
5‑2 FAQ(よくある質問)
Q1. 中古PCでも申請できますか?
A. できません。両制度とも中古・再生品は対象外です。新規購入のみ計上可能です。
Q2. リース契約を利用したいのですが?
A. 省力化投資補助金ではファイナンスリースのみ認められます。リース料軽減計算書が必須なので、リース会社に依頼して早めに準備してください。
Q3. 助成金と補助金を同時に申請できますか?
A. 可能ですが、同一の領収書・請求書を二重計上することは不可。経費区分を明確に分ければ併用できます。
Q4. 最低賃金はいくら上げればよいですか?
A. 業務改善助成金は事業場内最賃+30円以上、省力化投資補助金は地域最賃+30円かつ給与総額+2.0%/年が必要です。
Q5. PC単体を計上できる一番有利な制度は?
A. 売上・利益が大幅に落ち込んだ「特例事業者」に該当するなら、業務改善助成金が最もシンプルです。該当しない場合は、IoT設備とセットで省力化投資補助金に盛り込む方法が現実的です。
まとめ
2025年度は、汎用PC購入費を補助対象に含める例外規定が拡大しました。業務改善助成金では特例事業者に限りPC単体もOK、省力化投資補助金ではIoT設備と一体ならPC制御端末を申請できます。第3回公募(8/28締切)まで残りわずか。賃上げ宣言書と見積書を正しく整えれば、助成率最大3/4で投資コストを大幅に圧縮できます。
次にやるべきアクション
- 業務改善助成金・省力化投資補助金の最新公募要領をダウンロード
- 自社が「物価高騰等要件」の特例事業者に該当するか試算
- IoT設備導入計画がある場合は制御用PCをセット見積
- 賃上げ宣言書ドラフトを作成し、従業員代表の署名手配
- リースを予定する場合はリース料軽減計算書をリース会社に依頼